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講座集 / 信頼性と試験の統計 / 第 15 回

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VOL.05 信頼性と試験の統計 第 15 回 / 全 31 回

超音波探傷のボイド判別:小さいボイドは充填材の濃淡と同じ明るさになる

超音波探傷の画像でボイドは強く光るはずですが、音のスポットより小さいボイドは周りと平均されて薄まり、充填材の濃淡と見分けがつかなくなります。振幅では区別できない 2 つも、反射の位相を見れば分けられます。

23 分 標準 式 5 出典 6

この回の目次(7 節)
  1. §1 反射強度は音響インピーダンスの差で決まる
  2. §2 スポットの 1 割を占めるボイドは、充填材の濃淡と重なる
  3. §3 振幅で重なる 2 つを、位相で分ける
  4. §4 充填材の偏りは、ダイの縁の剥離応力へ直結する
  5. §5 ボイドの出どころは、低分子成分の沸点
  6. §6 分散した体積の 3 割から 5 割はフィレット
  7. §7 現場で動く判断

この回で示すこと

  1. 反射強度はアンダーフィル/シリコン界面で 13.5%、ボイドで 100%。
  2. スポットの 10% を占める直径 9.5 µm のボイドは、充填材分率 40% の領域と同じ明るさになる。
  3. 振幅で重なる 2 つは、反射の位相で分けられる。
充填材の濃淡と同じ明るさになるボイドの直径 9.5 µm
アンダーフィル/シリコン界面の反射強度 13.5 %

超音波の像に黒い点が出ます。その点をボイドと呼ぶ前に、もう 1 つの原因を消しておく必要があります。

音響像の明暗は、界面での反射の強さです。反射の強さは音響インピーダンスの差で決まる。ボイドは差を最大にしますが、充填材の分率が動いても同じ量が動きます。

反射強度は音響インピーダンスの差で決まる

界面の両側の音響インピーダンスを 、 とすると、振幅の反射係数は

です。密度と音速を掛けるだけ。

材料密度音速
空気1.2 kg/m³343 m/s0.0004 MRayl
エポキシ1200 kg/m³2600 m/s3.12 MRayl
シリカ2200 kg/m³5900 m/s13.0 MRayl
シリコン2330 kg/m³8430 m/s19.6 MRayl

この 4 行は手順を示すために据えた代表値で、実測値と別です。

充填材の体積分率 のアンダーフィルのインピーダンスを で近似し、シリコンとの界面の反射強度を出します。

状態反射強度
充填材 40%7.070.47022.1%
充填材 50%8.060.41717.4%
充填材 60%9.050.36813.5%
充填材 70%10.040.32310.4%
ボイド(空気)0.0004−1.000100%

ボイドは 100%、充填材の濃い場所は 10.4%。比は 9.6 倍です。

充填材の分率が 40% から 70% へ動くだけで、22.1% から 10.4% へ動きます。こちらの幅は 2.1 倍。

2 つの原因が、同じ 1 つの目盛りの上に乗っています。反射係数の測定そのものは確立した手法です。1992 年の音響インピーダンスと反射係数の測定法1が、その手順を追っている。測れるのは までで、 を作った原因は別の情報から入ります。

スポットの 1 割を占めるボイドは、充填材の濃淡と重なる

上の表の上では、9.6 倍の差があるので分けられそうです。スポット径を入れると重なります。

超音波の焦点スポットの直径を 、ボイドの直径を とすると、スポットに占める面積の割合は

画素が返す反射強度は、ボイドと健全部の重みつき和になります。

面積の割合 同じ明るさを作る充填材の状態
1.00100%(ボイドのみ)
0.5056.8%—
0.2030.8%—
0.1022.2%充填材 40% の領域
0.0517.8%充填材 50% の領域

スポットの 10% を占めるボイドは、充填材が薄い領域と同じ明るさを返します。

スポット径から、重なるボイドの直径が出ます。

周波数スポット径 のボイド径 のボイド径
50 MHz60 µm19 µm13 µm
100 MHz30 µm9.5 µm6.7 µm
230 MHz13 µm4.1 µm2.9 µm

100 MHz では、直径 10 µm 前後のボイドが充填材の濃淡と重なります。この桁は、5000 を超える入出力・150 µm 未満のピッチ2のバンプ間隔に対して十分に小さい。

周波数を上げれば重なる範囲は縮みますが、高分子中の減衰は周波数とともに強く増えます。スポット径が 2.3 分の 1 になるあいだに、減衰は 5 倍の桁で増える。透過深さと分解能が同じつまみの両端にあります。

振幅で重なる 2 つを、位相で分ける

振幅が同じ値を返しても、位相は別の値を返します。

  • ボイド — 界面でインピーダンスが不連続に落ちる。反射係数の符号が反転する
  • 充填材の濃淡 — インピーダンスが厚みの中で連続的に移る。傾斜した界面になる

2019 年の音響インピーダンスが傾斜する媒質の反射係数の位相の研究3が、この違いを追っています。インピーダンスが勾配を持つ媒質では、反射係数の位相が不連続界面の場合と別になる。

原因振幅位相
ボイド上がる反転する
充填材が薄い上がる連続のまま
充填材が濃い下がる連続のまま

位相を取れば、上の 2 行が割れます。振幅だけの濃淡画像では、この情報が捨てられている。

別の物理を使う手もあります。超音波は音響インピーダンス、X 線は電子密度に応じた減衰。空隙はどちらでも差を作りますが、充填材の濃淡は X 線でも差を作るので、2 つの像の重なり方が別になります。2 つの像で同じ場所が暗いなら、質量の欠落。片方だけなら、組成の分布。

充填材の偏りは、ダイの縁の剥離応力へ直結する

充填材の濃淡は、像の明るさと応力の 2 つを同時に動かします。

2008 年の充填材の沈降がフリップチップパッケージのダイ裏面の界面応力へ及ぼす影響の研究4が、この効果を計算しています。アンダーフィルは通常、充填材が一様に分布した等方性の媒質としてモデル化される。ところが充填材は沈降(偏析)する傾向があり、それが力学的な応答を変える。

局所の充填材濃度に異なるプロファイルを与え、森・田中法で実効的な材料定数を求め、界面応力を有限要素法で計算した結果です。

沈降のプロファイルダイの縁の剥離応力
二層に分離増える。平均体積分率に正比例する
連続的に傾斜大きさが別になる

影響は局所的だが、ダイの縁の近くで強い、と結論されています。

像で「濃淡がある」と分かった時点で、力学の側の入力も動いています。ボイドかどうかの 2 択で片付けると、こちらの行が空欄のまま残る。

充填材そのものの設計も動いています。2005 年のノーフロー・ウェーハレベルアンダーフィル向けの新しい充填材技術の開発5は、ナノ充填材を使って低い熱膨張率と良好なはんだ接合の形成という、それまで両立しなかった組み合わせを得たと報告しています。

粒径が下がれば沈降も遅くなります。ストークスの式で沈降速度は粒径の 2 乗に比例するので、粒径を 10 分の 1 にすると沈降は 100 分の 1。上の偏析の問題と、熱膨張率の問題が、同じ粒径のつまみへ乗っている。

ボイドの出どころは、低分子成分の沸点

本物のボイドが出る機構も、公開の研究で特定されています。

2009 年のノーフローアンダーフィルを用いたフリップチップのボイド形成機構の研究6は、共晶はんだの濡れとアンダーフィルの硬化の化学的な相互作用を出どころとしています。

工程の中で、はんだが溶け、アンダーフィルが硬化する。そのときフラックス剤や水分子のような低分子量の成分が化学反応で生じる。それらの沸点を超える温度では揮発し、それが広範に形成されるボイドの主因になる。

同定は 3 つの方法を重ねています。ボイド形成の観察、示差走査熱量測定のサーモグラムの比較、そしてガスクロマトグラフィと質量分析による化学組成の同定。

ボイドの原因は「そこで生成した」のほうでした。入口を塞ぐ対策と、生成そのものを抑える対策は別物です。

2013 年のノーフローアンダーフィルを用いたフリップチップ組立における不均一核生成の研究2が、この温度の綱引きを定量化しています。

操作電気的な組立歩留まりアンダーフィルのボイド
リフロー温度を上げる改善する悪化する

工程窓が狭いのは、この 2 つが同じ温度のつまみの両端にあるためです。同じ研究は、古典的な気泡核生成の理論でボイド核生成をモデル化し、5000 を超える入出力・150 µm 未満のピッチのフリップチップで実験と良く一致することを示しています。

核生成の理論式が、リフロー温度の設計へ直接入る。経験的な窓の探索から、計算で窓を定める形へ移っています。

分散した体積の 3 割から 5 割はフィレット

最後に、量の話です。

チップの下へ入る体積は ( はチップの辺、 は隙間)。縁に残るフィレットは、幅 ・高さ の三角形が周長 に沿って付くので 。

フィレットの占める割合は

µm、 mm、 mm で数を入れます。

チップの辺 下の体積フィレットの体積フィレットの割合
5 mm1.25 mm³1.50 mm³54.5%
10 mm5.0 mm³3.0 mm³37.5%
20 mm20 mm³6.0 mm³23.1%
30 mm45 mm³9.0 mm³16.7%

小さいチップほど、フィレットの割合が大きくなります。周長と面積の比が だからです。

フィレットの形は、表面張力と濡れ角が決めています。設計値として指定できるのは分散量までで、どこへ落ち着くかは材料の物性の側にある。充填材の粒径と熱膨張率を同時に設計した報告5が材料の側から入るのは、この境目の先にあるためです。

流れる時間も、寸法で強く動きます。隙間 を距離 だけ毛管で進む時間は

粘度 0.5 Pa·s、表面張力 0.035 N/m、濡れ角 30° で数を入れます。

距離 隙間 50 µm隙間 25 µm
5 mm25 s49 s
10 mm99 s198 s
20 mm6.6 分13.2 分
30 mm14.8 分29.7 分

時間は に比例します。チップを 2 倍にすると 4 倍、隙間を半分にするとさらに 2 倍。

大きくて隙間の狭いチップで、毛管の流れが止まる理由がこの掛け算です。先に塗ってから載せる方式が出てくるのは、この式の制約を逃れるためです。

現場で動く判断

  1. 反射強度は です。シリコン/アンダーフィル界面で 13.5%、ボイドで 100%。測れるのは までで、原因は別の情報から入ります。
  1. 充填材の分率 40〜70% が、明るさで 2.1 倍を占めます。22.1% から 10.4% へ。ボイドとの 9.6 倍を、この幅と同じ図の上で比べます。
  1. スポットの 10% を占めるボイドは、充填材の薄い領域と同じ明るさです。100 MHz・スポット 30 µm なら直径 9.5 µm。この径を、仕様書の検出下限として書きます。
  1. 周波数を上げると重なりは縮み、透過深さも縮みます。スポット径が 2.3 分の 1 になるあいだに、減衰は 5 倍の桁。分解能と深さは同じつまみの両端です。
  1. 位相が 2 つを分けます。インピーダンスが勾配を持つ媒質では反射係数の位相が別になる3。振幅だけの濃淡画像では、この情報が捨てられています。
  1. X 線と重ねると、質量の欠落と組成の分布が割れます。2 つの像で同じ場所が暗いなら前者、片方だけなら後者。
  1. 充填材の偏りは、ダイの縁の剥離応力を上げます。二層に分離した場合、平均体積分率に正比例して増える4。濃淡を見つけたら、力学の欄へも記入します。
  1. 沈降は粒径の 2 乗で乗ります。粒径を 10 分の 1 にすると沈降は 100 分の 1。ナノ充填材で低熱膨張率と接合形成を両立させた報告5があります。
  1. ボイドは入るより、そこで生成します。フラックス剤や水分子が沸点を超えて揮発する6のが主因。入口を塞ぐ対策と、生成そのものを抑える対策は別です。
  1. リフロー温度は、歩留まりとボイドの両端を同時に動かします。古典的な気泡核生成の理論2が、工程窓を計算で定める道を出しています。
  1. フィレットは分散量の 3 割から 5 割です。 で乗るので、小さいチップほど大きい。分散量の仕様に、フィレットの寄与を別項として立てます。
  1. 毛管の充填時間は に比例します。20 mm・隙間 25 µm で 13.2 分。この式の制約を逃れる方式が、先に塗る工程です。

出典

  1. 1 Method to measure acoustic impedance and reflection coefficient (1992) doi:10.1121/1.402733
  2. 2 Heterogeneous Void Nucleation Study in Flip Chip Assembly Using No-Flow Underfill (2013) doi:10.1115/1.4026164
  3. 3 Study on phase of reflection coefficient of the medium with gradient change of acoustic impedance (2019) doi:10.1121/1.5136690
  4. 4 Underfill Filler Settling Effect on the Die Backside Interfacial Stresses of Flip Chip Packages (2008) doi:10.1115/1.2957324
  5. 5 Development of Novel Filler Technology for No-Flow and Wafer Level Underfill Materials (2005) doi:10.1115/1.1846067
  6. 6 Void Formation Mechanism of Flip Chip in Package Using No-Flow Underfill (2009) doi:10.1115/1.3153369