「1,000 サイクルの熱サイクル試験に通ったので、市場では 10 年もちます」。この 1 文は、試験サイクルを市場の年数へ換算する係数——加速係数(AF)——の上に乗っています。では、その係数はどこから来た数字なのか。誰が、何を測って決めたのか。
同じ式を、同じ著者が、2 つのデータセットから較正しています。指数が 3 倍ずれました。まず 3 倍の差がどこから出たのかを、たった 3 点の実測から手で再現します。次にその 3 倍が、換算値として何倍の差になるのかを、全項を組み立てて確かめます。最後に、指数のずれ自体が何を教えているのかを追います。
熱サイクル試験の結果を市場条件へ換算する加速係数(AF)の式を、2 つのデータセットから較正した結果です。式の形は同じで、ランプレートの指数 と 保持時間の指数 だけが別になります。
この式は、ウェーハレベルチップスケールパッケージを異なる熱サイクル荷重のもとで調べ、新しい加速係数式を組み立てた 2016 年の論文1が出したものです。同じ論文が動機をこう書いています。広く使われている Norris-Landzberg 式は、ランプレートが高い条件で実験結果を正しく予測できず、むしろ逆の結果になることがある。原因は、ランプレートが動くとはんだのひずみ速度の働き方が動くこと。そこでN-L 式の周波数項を、ランプレートと保持時間の効果を切り分ける新しい項へ置き換えた、というのがこの式の成り立ちです。式の特性づけは同じ年の別の論文2が相手にしています。
| 較正元 | (ランプレート) | (保持時間) |
|---|---|---|
| シミュレーションの疲労寿命 | 0.14 | 0.08 |
| 試験データの疲労寿命 | 0.39 | 0.25 |
が 2.8 倍、 が 3.1 倍。
理由は率直です。2 組の と の違いは、較正に用いたデータセットの違いから生じます。一方はシミュレーション結果から、もう一方は実験データから導いたものです。
どちらを使うべきかも決まっています。新しい AF 項は、シミュレーションデータから導いた と と組み合わせるのが推奨です。
理由が意外でした。根拠は精度の高さより別のところにあります。実験由来の係数で AF 寿命予測の精度が下がるのは、試験過程に内在する不確かさに起因していて、それはケースごとに別になります。そうした要因には、熱サイクル試験中の温度、ランプ時間、保持時間の公差が含まれます。対照的に、シミュレーションではこれらの不確かさが除かれています。
実験由来の には、はんだの物理と、試験装置の公差が混ざっています。WLP の試験レグに対しては実験由来の係数のほうが差が小さい(自分自身のデータで較正しているので当然です)が、BGA や CSP を含む他文献のケースへ広げるとシミュレーション由来のほうが良い、というのが検証の結果でした。
指数が 3 倍離れると、換算値がどれだけずれるか
修正 AF 式のうち、 と が乗っているのはこの 2 項だけです。
がランプレート、 が保持時間。温度差 の指数は 1.9 に固定されていて、 とも とも別です。
試験側の条件は決まっています。JESD22-A104D 条件 G、 °C、ランプ 16.5 °C/min、保持 10 分。市場側は出典に無いので、ここでは仮定を 3 通り立てて計算します。
| 市場側(仮定) | 比 | 比 | =0.14, =0.08 | =0.39, =0.25 | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 °C/min、保持 8 時間 | 16.5 | 0.0208 | 1.09 | 1.13 | 4% |
| 1 °C/min、保持 10 分 | 16.5 | 1 | 1.48 | 2.98 | 2.0 倍 |
| 16.5 °C/min、保持 8 時間 | 1 | 0.0208 | 0.73 | 0.38 | 1.9 倍 |
1 行目では、指数が 3 倍離れているのに AF が動くのは 4% どまりです。ランプ項が 比 16.5 で 1 より大きく、保持項が 比 0.021 で 1 より小さいので、指数が大きいほど両項が逆向きに強く乗って、積がほぼ打ち消し合うからです。
2 行目と 3 行目では、片方の項だけが動くので、2 倍の差がそのまま出ます。
つまり「較正元で 3 倍離れる」が実務で何倍の差になるかは、市場側のプロファイル次第です。ランプも保持も試験と大きく離れた条件では小さく、片方だけが離れた条件では大きく出る。指数だけで危険度は判断できない。 比と 比を入れて、積で確かめてください。
本質的な問題が 1 つ。なぜシミュレーションと実験で、ランプと保持の働き方が違って浮かぶのか。
シミュレーションに入っているのがクリープと塑性だけなのに対し、実験にはIMC の成長、酸化、粒成長、微小亀裂の合体が入っています。時間依存性の別な機構が混ざっているので、単一の指数で表そうとすると値がずれる。そのうち IMC については、金属間化合物がはんだ接合の疲労寿命予測へどう乗るかを有限要素モデルで調べた 2003 年の論文3が、層そのものをモデルへ入れた場合の効果を調べています。
指数のずれ自体が、モデルから抜けた機構があることのサインです。
数字を最後まで通す:AF を 1 本、組み立てる
項ごとの比較を横へ並べても、実務で使う数の大きさは宙に浮いたままです。2016 年の修正 AF 式1の 4 項すべてに数字を入れて、1 本の AF を出します。
試験側は先ほどと同じです。JESD22-A104D 条件 G、 °C、ランプ 16.5 °C/min、保持 10 分。市場側は出典に無いので、上の表の 1 行目と同じ仮定を添えます。 °C、1 °C/min、保持 8 時間。
温度差の項。 K、 K、比 2.75。指数は固定の 1.9 なので
ランプの項。 比は 。 なら 。
保持の項。 比は 。 なら 。
この 2 項の積が 。さきほどの表の 1 行目に出ていた値がこれです。
Arrhenius の項。 K、 K。
掛け合わせます。
、 でやり直すと、ランプ項が 、保持項が 、積が 1.13。
| 較正元 | 項 | ランプ × 保持 | Arrhenius 項 | AF |
|---|---|---|---|---|
| シミュレーション(=0.14、=0.08) | 6.84 | 1.09 | 2.00 | 14.9 |
| 実験(=0.39、=0.25) | 6.84 | 1.13 | 2.00 | 15.5 |
1,000 サイクルの試験は、市場の約 14,900 サイクル相当。較正元を替えても 15,500 で、動くのは 4% どまりです。
並べ直すと、寄与の順位が意外です。3 倍離れた ・ がまとめて動かしたのは 1.09 → 1.13、つまり 4%。一方、 eV という「小さい」活性化エネルギーの Arrhenius 項が単独で 2.00 倍、温度差の項が 6.84 倍。
この条件では、AF の桁を作っているのは 項で、 と は小数第 2 位の話です。ただし「この条件では」という限定が付いています。上の表の 2・3 行目のように、ランプ比か保持比の片方だけが 1 から離れる条件では、同じ ・ が 2 倍を作る。積を組み立てるまで、危険度は切り分けられません。
3 倍の差は、たった 3 点から出ている
と を決めたデータそのものを追います。加速係数式を特性づけた 2016 年の論文2が相手にしている熱サイクルプロファイルは 3 つだけです。
| ランプ時間 (s) | 保持時間 (s) | 疲労寿命(解析) | 疲労寿命(実験) |
|---|---|---|---|
| 600 | 600 | 245 | 246 |
| 900 | 600 | 258 | 288 |
| 600 | 300 | 259 | 293 |
3 点で 2 つの係数を左右しています。1 行目を基準に、2 行目がランプだけを、3 行目が保持だけを動かす形なので、 は 1・2 行目から、 は 1・3 行目から一意に決まります。自由度はゼロです。
なぜ「対数の比」で出るのかを、1 段だけ書いておきます。修正 AF 式が寿命をべき乗則で表しているとすると、
AF は試験と市場の寿命の比なので、寿命の側では指数の符号が反転します(ランプが速いほど、保持が長いほど、寿命は短い)。ここで保持時間を揃えて 2 条件の比を取ると が消え、残るのは 1 本だけです。
両辺の対数を取っただけです。指数を実測から取る操作は、いつもこの形になります。
実際に解いてみます。ランプ時間 600 s → 900 s はランプレートが 1.5 倍遅くなること、つまり なので、分母の符号が反転して
解析は 、実験は 。
保持時間 600 s → 300 s は 2 分の 1 なので、
解析は 、実験は 。
は 0.08 と 0.25 に完全に一致します。 は 0.13 と出て、報告値の 0.14 とわずかに違いますが、これは表のサイクル数が整数へ丸められているためで、解析側が 259 なら 0.14 ちょうどになります。
この計算が 3 倍の正体を示します。
| 変更 | 解析の寿命変化 | 実験の寿命変化 | 比 |
|---|---|---|---|
| ランプを 1.5 倍遅く | +5.3% | +17.1% | 3.2 |
| 保持を半分に | +5.7% | +19.1% | 3.3 |
係数が 3 倍離れているという話より、実験のほうが、ランプと保持に 3 倍敏感なのです。
解析には Sn/Ag の双曲線正弦クリープ則が入っています( = 23.17 /s、 = 0.0509 MPa⁻¹、 = 5.04、 = 41.6 kJ/mol)。時間依存の変形は表現されている。それでも反応は実験の 3 分の 1 どまり。抜けているのは、時間とともに材料そのものが動く側の機構です。
ちなみにこの から遷移応力は MPa。遷移応力は 20 MPa 前後で出典をまたいで揃う量で、ばらつくのは前指数 のほうです。
1414 という数字は、活性化エネルギーである
修正 AF 式の最後の項は Arrhenius です。
1414 は温度の次元を持っていて、中身は です。 eV/K なので
この 0.122 eV が小さいことは、他の劣化機構で使われる桁と見比べて初めてわかります。ここから先は、 を振ったときに加速倍率がどう動くかを、この記事で計算したものです。0.122 eV だけがNorris-Landzberg の式90574-3)由来の実値で、0.35 eV と 0.45 eV は、シリコン側の劣化機構で使われる桁として仮定した値です。
を 100 °C から 125 °C へ上げたときの加速倍率を、それぞれで計算します。
| (K) | 加速倍率 | 由来 | |
|---|---|---|---|
| 0.122 eV | 1,414 | 1.27 | N-L 式の係数そのもの |
| 0.35 eV | 4,062 | 1.98 | 感度を追うために仮定した値 |
| 0.45 eV | 5,222 | 2.41 | 感度を追うために仮定した値 |
同じ 25 K の上乗せが、 = 0.122 eV なら 1.27 倍、0.45 eV なら 2.41 倍。温度を上げて試験を短くする作戦は、活性化エネルギーの大きい機構にはよく乗り、はんだ疲労には 1.27 倍どまり。はんだ側で加速を稼ぐ手は温度上限より のほうで、そちらの指数は 1.9 です。
加速係数を掛け算で分けてよいのか
ここが、2 つの流儀を並べて初めて浮かぶところでした。
バーンインの加速係数は、温度と電圧の積で書かれます。
語の並びに、条件が 1 行だけ付いています。 は電圧加速であり、温度と電圧の交互作用は無し。
ここから先は、積の構造が何を仮定しているかを追うための数値例です。仮に = 90、 = 16 と仮定すると、総加速は = 1,440。 時間なので、48 時間のバーンインが市場の約 7.9 年ぶんという換算になります。この 7.9 年は、交互作用が無いという 1 行の上に乗っています。
加速モデルをこういう形で組むこと自体は古くからあり、熱サイクルによる経年加速の一般モデルを立てた 1986 年の論文4がその系譜にあります。
一方で、同じ「独立な因子の積」という作りが破れる例もあります。Norris-Landzberg 式(1970 年)90574-3)はランプレートと保持時間を 1 つの周波数項 にまとめていて、その結果こうなります。
ランプレートが速いほど N-L の AF 式は寿命を長く予測しますが、これは実験データと矛盾します。実験データは一貫して、ランプレートが速いほど試験寿命が短いことを示しています。
大きさの話に留まらず、符号が逆です。
原因も明快です。この不一致は、N-L の AF 式がランプレートと保持時間の両方の因子を単一の周波数項にまとめていることから生じます。結果として、はんだのひずみ速度の効果が式から落ちます。N-L 式の限界を論じ、鉛フリーはんだの加速係数を損傷累積に基づく方法で見積もった 2010 年の報告5が、題名でそのまま「限界」を掲げています。
修正式が と に分けたのは、この 1 点を直すためでした。まとめてよいかどうかは、分けて実測して初めてわかります。分けてみたら、向きが逆だった。
バーンインの は、その検算を「交互作用は無し」という宣言で済ませています。それが本当に成り立つかどうかは、宣言しただけでは分かりません。加速係数を掛け算で分解している式を見たら、どの因子とどの因子が独立だと仮定されているかを数えてください。N-L の場合、独立だと仮定されていた 2 つが実は逆向きに乗っていました。
FEM は実験と 10% 以内で合っている
AI の訓練データを FEM で作るためには、まず FEM が信用できることを示すことになります。ランダムフォレストでウェーハレベルパッケージの信頼性寿命を予測した 2020 年の論文6と、AI 支援の design-on-simulation を概観した 2021 年の論文7が、その順序を踏んでいます。後者は「AI の訓練データベースを大量に作る前に、シミュレーション手順を複数の実験で検証した」と書いています。検証は 5 つの WLP テストビークルで行われています。
| TV | 実験 MTTF(サイクル) | FEM 予測(サイクル) | 差 | 誤差 |
|---|---|---|---|---|
| TV1 | 318 | 313 | −5 | −1.6% |
| TV2 | 1,013 | 982 | −31 | −3.1% |
| TV3 | 587 | 587 | 0 | 0% |
| TV4 | 876 | 804 | −72 | −8.2% |
| TV5 | 904 | 885 | −19 | −2.1% |
すべて 10% 以内。最大でも 8.2%。
5 件中 5 件が過小予測です。符号が揃っている。系統的なバイアスがあります。
平均すると −3.0%。ランダムな誤差より系統誤差なので、+3% の補正を入れれば精度が上がるはずですが、補正は省いたまま5 点では系統誤差と偶然の区別が付くところまで届かない、という判断でしょう。
結論はこうなります。ATCT 実験は、この検証済み FEM シミュレーションで置き換えることができ、コストと時間を最小化できる。実験的手法では、1 回の ATCT 試験に数か月かかります。
数か月 対 数時間。これが AI の訓練データを FEM で作る根拠です。
寿命式とメッシュサイズは一組
使われている寿命式は、Coffin-Manson の等価塑性ひずみモデルです。この系統の式を共晶 Sn-Pb と鉛フリーの両方へ当てる方法論は、修正 Coffin-Manson 法をまとめた報告8がまとめています。
SAC305 では 、。
手順に、重要な一文があります。
シミュレーション手法の柱は 2 つ。適切な力学的挙動から決めたクリティカル位置での固定メッシュサイズと、全テストビークルの寿命サイクルを検証するための経験的寿命予測式です。
WLP の中立点から最大距離にあるはんだ接合について、固定メッシュサイズを用いてモデリングのパターンとシミュレーション手順が確立されています。
メッシュサイズは固定で、収束計算は省いてあります。
メッシュサイズは経験式の一部です。、、そして固定メッシュサイズ。この 3 つで 1 つのモデルになります。
メッシュを細かくすると、 が大きくなり、 が短く出ます。定数 と はそのメッシュサイズで較正されているので、メッシュだけ変えると壊れます。
2 次元 FEM を使っていることも書かれています。理由は AI の訓練モデルを構築するには大量のデータが必要だから。精度と件数の交換です。
4 つのパラメータだけを振っている
AI 訓練用のデータベースを作るために、最も影響の大きい 4 つの設計パラメータが選ばれています。AI 支援 design-on-simulation の概観7が冒頭で挙げているのも、上下のパッド径、はんだ体積、バッファ層の厚み、チップ厚という同じ顔ぶれです。
| パラメータ | 範囲 |
|---|---|
| シリコンチップ厚 | 150 〜 450 µm |
| 応力緩衝層(SBL)厚 | 5 〜 32.5 µm |
| 上側パッド径 | 180 〜 240 µm |
| 下側パッド径 | 180 〜 240 µm |
WLP には他にも、ソルダマスク、はんだボール、I/O パッド、UBM、PCB 寸法、シリコンチップがありますが、この 4 つに絞っています。
チップ厚と SBL 厚が入っているのは、どちらもひずみをどこへ振り向けるかを確定する寸法だからです。SBL は応力緩衝層そのもので、硬い層と柔らかい層の並びを設計する側の変数になります。
訓練データの作り方が、完全な要因配置でした。
| 水準数 | データ数 | 内訳 |
|---|---|---|
| 4 | 256 | |
| 5 | 625 | |
| 6 | 1,296 | |
| 7 | 2,401 | |
| 8 | 4,096 | |
| 25 値 | 9,000 | 組み合わせから |
全部の組み合わせを回しています。サンプリングでも実験計画でもなく、総当たり。
水準・4 因子なら 件。水準を 1 つ増やすと件数が 4 乗で増えます。7 水準の 2,401 件から 8 水準の 4,096 件へ、水準 1 つで 1.7 倍。
試験は数か月かかるので総当たりは不可能ですが、FEM なら可能です。ここが「シミュレーションを実験の代わりに使う」ことの実質的な利得で、時間短縮より、探索空間を埋め尽くせることです。
テスト用には 上記の訓練データセットの内挿から数百件をランダムに選ぶ、と書かれています。内挿なので、外挿の成績はここでは未測定です。
訓練データを増やせば AI の性能は上がるが、CPU/GPU 時間も増える、という但し書きも付いています。
テストビークルの寸法
5 つの TV の寸法をまとめておきます(mm)。ランダムフォレストで WLP の寿命を予測した 2020 年の論文6が相手にしているのも、この系列のテストビークルです。
| TV1 | TV2 | TV3 | TV4 | TV5 | |
|---|---|---|---|---|---|
| Si チップ | 5.3 × 5.3 × 0.33 | 4 × 4 × 0.33 | 4 × 4 × 0.33 | 4 × 4 × 0.33 | 6 × 6 × 0.33 |
| Cu RDL | 0.26 × 0.008 | 0.26 × 0.008 | 0.18 × 0.004 | 0.2 × 0.004 | 0.25 × 0.0065 |
| UBM | — | 0.24 × 0.0086 | 0.17 × 0.0086 | 0.19 × 0.0086 | 0.24 × 0.0075 |
| Cu パッド | 0.22 × 0.025 | 0.22 × 0.025 | 0.22 × 0.025 | 0.22 × 0.025 | 0.22 × 0.04 |
| SBL1 | 0.0075 | 0.0075 | 0.0075 | 0.0075 | 0.008 |
| SBL2 | 0.01 | 0.004 | 0.004 | 0.004 | 0.0065 |
| low-k | 0.005 | 0.005 | 0.005 | 0.005 | なし |
| ボール径 | 0.25 | 0.25 | 0.18 | 0.2 | 0.25 |
| ボールピッチ | 0.4 | 0.4 | 0.3 | 0.3 | 0.4 |
| ボール数 | 121 | 100 | 144 | 144 | 196 |
| MTTF | 318 | 1,013 | 587 | 876 | 904 |
TV1 と TV2 は、チップサイズが 5.3 mm 角と 4 mm 角の違いだけで、MTTF が 318 と 1,013。3.2 倍違います。
チップの一辺が 1.33 倍になっただけで、寿命が 3 分の 1。DNP(中立点からの距離)が 1.33 倍になれば、はんだのせん断ひずみも 1.33 倍。Coffin-Manson の指数 を当てると
予測は 0.61 倍ですが、実際は 0.31 倍。単純な DNP 則で届く範囲を超えています。TV1 は SBL2 が 0.01 mm、TV2 は 0.004 mm とは別なので、そこも乗っています。
TV5 は low-k が無い構成です。ボール数 196 で最多。
TV3 と TV4 は、ボール径が 0.18 と 0.2 mm、RDL 径が 0.18 と 0.2 mm の違いだけで、MTTF が 587 と 876。1.5 倍。ボール径 11% の差が、寿命 49% の差になっています。
Coffin-Manson の予測は 1.20 倍、実際は 1.49 倍。はんだ体積の効果が、ひずみ振幅だけで届く範囲を超えたぶんが残っています。
AI-DoS が解こうとしている問題
AI-DoS の動機は明確です。AI 支援 design-on-simulation の概観7が、こう書いています。
電子実装のコミュニティは伝統的に design-on-simulation に依拠して新しい実装構造を開発してきました。しかしこの手法は、シミュレーション結果の信頼性と一貫性を確保するうえで課題を抱えていて、それらはしばしば個々の研究者の専門性に大きく依存します。
AI-DoS の利点として挙げられているもの。
- 信頼でき、一貫した予測結果(信頼性と反りの両方について)
- 設計サイクルの大幅な短縮。モデル確立後はミリ秒から秒で予測できる
- 物理実験の必要性を減らすことによるコスト削減
- シミュレーションの専門性に対する参入障壁を下げる
- 異なる開発者間で結果を統一する
「参入障壁を下げる」と「結果を統一する」が並んでいるのが要点です。同じ概観が理由をはっきり書いています。シミュレーションの解析結果は個々の研究者に強く依存し、研究者のあいだで結果がばらつくのが普通だった。AI が担っているのは、速さより一貫性のほうだということです。
方法論の第 1 段階は、力学理論と実験結果に対して有限要素シミュレーションを検証し、シミュレーションの精度を確保すること。
AI の前に FEM の検証があります。上の 5 テストビークルの表が、まさにその第 1 段階でした。
実務での使い方
と が何の指数かを確かめてください。ランプレートと保持時間です。温度差の指数は 1.9 に固定されています。
指数が 3 倍離れても、AF が 3 倍離れるとは限らない。ランプ項と保持項が逆向きへ乗る条件では 4% まで縮み、片方だけが乗る条件では 2 倍出ます。市場側のプロファイルを入れて積で確かめてください。
推奨はシミュレーション由来の = 0.14、 = 0.08 です。精度が高いからより、実験由来の係数には試験装置の公差が混ざっているからです。
指数のずれが教えるのは、モデルから抜けた機構があるサインです。IMC 成長や酸化は、クリープ解析から抜けています。実験のほうがランプと保持に 3 倍敏感でした。
温度上限を上げてもはんだ疲労への加速は 1.27 倍どまりです。 = 0.122 eV なので 25 K 上げて 1.27 倍。活性化エネルギーが 0.35〜0.45 eV の機構なら 2 倍前後になります。
加速係数を積で分解している式を見たら、どの因子が独立だと仮定されているかを数えてください。N-L はランプと保持をまとめた結果、加速の向きを取り違えていました。
寿命式の定数とメッシュサイズは一組です。、、固定メッシュ。どれか 1 つを変えると壊れます。
FEM を実験の代わりに使う利得は、時間短縮より探索空間の網羅です。4 因子 8 水準の総当たり 4,096 件は、実験では不可能です。
内挿でテストしたモデルについて、外挿の成績は未測定のままです。訓練範囲の外は別に確かめてください。
AI の前に FEM の検証があります。5 点で 10% 以内、というのがここでの水準です。
この記事の AF は、寿命 がすでに求まっていることを前提に、試験と市場の の比を作る操作でした。その 自体をどう求めるかは、別の式です。ここで使われたのは Coffin-Manson の 1 本きりで、、、固定メッシュの 3 点セットで動いています。同じ寿命を、ひずみで書くかエネルギーで書くかで、別の式になります。修正 Coffin-Manson 法をまとめた報告8が共晶 Sn-Pb と鉛フリーの両方を並べているのも、定数が材料と書き方で動くからです。AF の指数が較正元で 3 倍動いたのとまったく同じことが、寿命式の側でも起きています。換算がずれたとき、AF の層でずれたのか寿命式の層でずれたのかを分けて初めて、誤差を追いかける先が決まります。