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講座集 / 信頼性と試験の統計 / 第 24 回

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VOL.05 信頼性と試験の統計 第 24 回 / 全 31 回

ブリッジ接合のせん断:熱膨張差ゼロの接合が 1.34 倍きつい

シリコン同士をつなぐブリッジの接合は、熱膨張差がないのに、基板側の接合より大きなせん断を受けます。距離と高さの比で比べると背の低さが距離の短さを打ち消していることが分かり、どこまで高くすれば釣り合うかも求まります。

29 分 応用 式 22 出典 8

この回の目次(9 節)
  1. §1 拘束元をたどると、効いている膨張差が変わる
  2. §2 材料定数が消える:
  3. §3 交差点は高さ 46.9 µm。実際は 35 µm で 25% 手前
  4. §4 直列ばね:高さの 29% が、たわみの 53% を作る
  5. §5 隙間の 87% は空——面積で剛性が逆転する
  6. §6 を跨ぐと、樹脂の分担が 37.9% から 0.61% へ
  7. §7 同じ表が、2 つの基準で逆の材料を返す
  8. §8 保持率は より「使用温度との差」で並ぶ
  9. §9 材料カードの折れ点 90 ℃ は、市販品より 30 K 以上低い

この回で示すこと

  1. で比べると材料定数が消え、 はブリッジ側 42.9、基板側 32.0 で 1.34 倍。
  2. 2 つのせん断が等しくなる高さは 46.9 µm で、実際の 35 µm は 25% 手前。
  3. ガラス転移を越えると、アンダーフィルの分担は 37.9% から 0.61% に落ちる。
ブリッジ側のせん断(基板側比) 1.34 倍
せん断が等しくなる接合高さ 46.9 µm
ガラス転移を越えた樹脂の分担 0.61 %

2 つのシリコンチップレットを、シリコンの橋で細いバンプ接合する構造があります。つなぐ 2 者は同じ材料なので、熱膨張差はゼロです。

それでも、アンダーフィルを入れた解析では、隅のはんだキャップの引張と圧縮が大幅に減りました。埋めるべき熱膨張差がゼロの接合で、アンダーフィルが効いています。

拘束元をたどると、効いている膨張差が変わる

接合部が受ける相対変位を握るのは、その 2 者の熱膨張差以外の量です。2 者を外から動かしているものがあれば、そちらが支配します。

構造を一覧にします。

部材材料
チップレット 2 個シリコン
橋シリコン
細いバンプ(チップレット ⇔ 橋)銅ピラー+錫系はんだキャップ
太いバンプ(チップレット ⇔ 基板)錫銀銅はんだ
パッケージ基板有機コア 800 µm + ビルドアップ

チップレットは太いバンプで有機基板に留まっています。基板が膨張すると、その上の 2 つのチップレットの間隔が開きます。橋はその 2 つをまたいでいる。

橋は基板の外側にあり、チップレットにぶら下がっているだけです。だから橋が受け取るのは、チップレット経由の変位に限られます。その差が、そのまま細いバンプのせん断になります。

手順が 3 段で書けます。接合部 A–B について、

  1. A と B の熱膨張差を求める
  2. A と B がそれぞれ何に拘束されているかをたどる
  3. その拘束元どうしの熱膨張差を求める

3 番のほうが大きければ、1 番は無関係です。中立点からの距離がはんだ接合の寿命を握ることを正面から主題にした1997 年の研究1があるとおり、「どこを中立点に取るか」が先に決まります。橋の側の中立点は、橋の中心より、基板とチップレットの系のほうにあります。

材料定数が消える:

順位を付けるために、寸法だけで比べます。

長さ の区間をまたぐ 2 部材の相対変位は

これを高さ の接合部が受け持つので、せん断ひずみは

細いバンプと太いバンプを動かしている は、同じ 1 つです。どちらも「有機基板とシリコン」の差で動いています。同じ基板の膨張を、別の距離と別の高さで受けているだけ。だから比を取ると、 も も消えます。

添字 が細いバンプ、 が太いバンプです。

寸法を入れます。橋が 3 × 2 mm なので対称中心から長辺の隅まで 1.5 mm、高さは銅ピラー 25 µm + はんだキャップ 10 µm で 35 µm。チップレットが 4.8 mm 角なので中心から縁まで 2.4 mm、高さ 75 µm。

細いバンプ1.5 mm35 µm42.9
太いバンプ2.4 mm75 µm32.0

熱膨張差がゼロの接合部のほうが、差が最大の接合部より 34% 大きいせん断ひずみを受けます。

内訳を分けます。距離では 倍と有利、高さでは 倍と不利。

背が低いことが、距離が短い利得を打ち消しています。立ち上がり高さがはんだ接合の耐久へ乗ることは2009 年のボイドと立ち上がり高さの相互作用の研究2が対象にする軸そのもので、ここではそれが距離の軸と正面からぶつかっています。

交差点は高さ 46.9 µm。実際は 35 µm で 25% 手前

2 つが等しくなる条件を解きます。

細いバンプが 46.9 µm 背高ければ、2 つは並びます。実際は 35 µm。

設計の数字として使える形になりました。ピッチと中立点距離を同時に振ってはんだ接合の熱サイクル寿命を比べた2016 年の報告3のように、2 つの軸は独立に動きます。ここでは高さを 34% 積み増せば順位が入れ替わる、という位置にいます。

ただしこれは上限側の見積もりです。チップレットが基板の変位のうち受け取る割合は 1 未満なので、細いバンプ側の実効 には 1 より小さい係数が掛かります。それでも桁は同じままです。「同じ材料同士だから安全側」という順位付けが、幾何の段階で崩れていることが読み取れれば十分です。

直列ばね:高さの 29% が、たわみの 53% を作る

アンダーフィルが剛性で乗る、という筋の裏を取ります。まずバンプ自体の実効弾性率です。

銅ピラーとはんだキャップは直列なので、たわみが足し算になります。断面積を共通として

はんだの弾性率は温度に線形で GPa、85 ℃ で 43.05 GPa。銅は 121 GPa。

部分高さの割合たわみの割合
銅ピラー71%47%
はんだキャップ29%53%

高さで 29% にとどまるはんだが、たわみの 53% を作っています。直列では柔らかいほうが支配します。銅ピラー接合を正面から主題にした2007 年の報告4が銅の側を伸ばす方向にあるのも、この分担のためです。

隙間の 87% は空——面積で剛性が逆転する

次に、その隙間をバンプがどれだけ占めているか。径 20 µm、ピッチ 50 µm の正方格子なので

隙間の 87.4% は、アンダーフィルが無ければ空です。

そこへ 7 GPa の樹脂が入ります。ポアソン比を同じとみなすと、面積で重みを付けた剛性の比は

弾性率で 11 倍負けている樹脂が、面積で 7 倍勝つので、隙間の剛性を 6 割増やします。

37.9% という分担は、「熱膨張差を緩和する」という説明では片付かない大きさです。フリップチップ実装でアンダーフィルの選定が信頼性へ与える影響を主題にした1998 年の研究5が 2 つの役割を並べているとおり、役割は 2 つあります。ここでは片方が作用する相手を欠くので、残る片方の大きさがそのまま測れます。

を跨ぐと、樹脂の分担が 37.9% から 0.61% へ

同じ式が、次の話をあらかじめ壊します。ガラス転移点を超えて樹脂が 0.07 GPa まで落ちると

状態樹脂の弾性率剛性比分担
ガラス転移点より下7 GPa0.61137.9%
ガラス転移点より上0.07 GPa0.00610.61%

100 分の 1 です。分担で見ても 62 分の 1。

剛性で支える設計は、ガラス転移点を境に消えます。毛細管充填のアンダーフィルを正面から主題にした2002 年の報告6が材料の熱特性を一覧にするのも、この崖があるからです。

同じ表が、2 つの基準で逆の材料を返す

実測された 11 種類のアンダーフィルから 5 つ抜きます。

材料充填材熱膨張係数25 ℃ の貯蔵弾性率110 ℃保持率
A40%46.5 ppm/℃142 ℃3.88 GPa3.00 GPa77%
E67%21.0137 ℃4.80 GPa2.86 GPa60%
F67%38.6120 ℃5.40 GPa2.00 GPa37%
H68%28.6151 ℃7.80 GPa6.67 GPa86%
I67%30.0186 ℃5.09 GPa4.79 GPa94%

熱膨張係数で選べば E、剛性で選べば H。110 ℃ での弾性率は H が E の 2.33 倍、熱膨張係数は E が H より 27% 低い。

両立は、この表からは読めません。左下がりの直線に乗る材料群が表の中で空席なので、総合点で 1 つ選ぶという操作も、そこで止まります。

シリコン同士の橋なら H です。緩和する熱膨張差がゼロなので、E の低い熱膨張係数は買う理由を欠きます。シリコンとガラス基板のように差が残る接合なら、E の側へ振る意味が出ます。1998 年の選定の研究5が構造をそろえて比べているとおり、答えは構造ごとに別です。

保持率は より「使用温度との差」で並ぶ

保持率の列を、 と測定温度 110 ℃ の差で並べ直します。毛細管充填のアンダーフィルの熱特性を一覧にした2002 年の報告6が充填材の量と併記しているとおり、この列は組成と直結しています。

材料保持率
F10 K37%
E27 K60%
A32 K77%
H41 K86%
I76 K94%

単調です。5 点で最小二乗を当てると

余裕 1 K あたり 0.82 ポイント。差 10 K で 37%、差 76 K で 94%。

効いているのは の絶対値より、使用温度との差のほうです。仕様に を単独で書くと、この差が消えます。書くべき形は「使用温度 + いくつ」です。

保持率 80% が要るなら、余裕は 48.6 K。使用温度 110 ℃ に対して ℃ です。

材料カードの折れ点 90 ℃ は、市販品より 30 K 以上低い

最後に、解析に入っている材料カードと実測の突き合わせです。

解析のアンダーフィルは、90 ℃ を境に弾性率が 7 GPa から 0.07 GPa へ 100 分の 1 に落ちる設定でした。ところが実測された 11 種類の は 120〜186 ℃。

カードの材料は、実測されたどの市販品より 30 K 以上低い転移点を持つ設定です。0.07 GPa というゴム状領域の値そのものは妥当で、動いているのは「どこでゴムになるか」のほうです。

この差が結論に届くかどうかは、解析の温度上限で決まります。

温度プロファイルの上限折れ点 90 ℃ との関係アンダーフィルの状態
85 ℃5 K 下全サイクルで 7 GPa
125 ℃35 K 上高温保持でゴム状

85 ℃ の解析では、折れ点まで 5 K の余裕があります。だから 37.9% の分担が全サイクル保たれ、剛性で支える筋書きが通ります。

同じ構造を 125 ℃ まで振ると、高温保持のあいだだけ分担が 0.61% へ落ちます。 が 150 ℃ 級の材料を使えば分担は保たれますが、それは材料カードを差し替えたということなので、85 ℃ の結果をそのまま持ち込む操作は止まります。

はんだの粘塑性を 9 定数で書く枠組みを適用した1998 年の研究7や、同じ枠組みを合金ごとに当てた2000 年の報告8があるとおり、はんだ側の定数は温度域ごとに取り直す量です。樹脂側にも同じ手順が要ります。

出典

  1. 1 The Roles of DNP (Distance to Neutral point) on Solder Joint Reliability of Area Array Assemblies (1997) doi:10.1108/09540919710800674
  2. 2 Interaction Effect of Voids and Standoff Height on Thermo-Mechanical Durability of BGA Solder Joints (2009) doi:10.1115/imece2009-11471
  3. 3 The Combined Effect of Assembly Pitch and Distance to Neutral Point on Solder Joint Thermal Cycling (2016) doi:10.37665/smyrnah52814
  4. 4 Copper-Pillar Interconnect for Flip-Chip-On-Module Packaging (2007) doi:10.37665/wafwvml16012
  5. 5 Underfill Selection and its Impact on the Reliability of Flip-Chip Assemblies (1998) doi:10.1115/imece1998-1088
  6. 6 Advanced Capillary Underfill for Flip Chip Attachment (2002) doi:10.37665/smvegok53810
  7. 7 Applying Anand Model to Represent the Viscoplastic Deformation Behavior of Solder Alloys (1998) doi:10.1115/1.1371781
  8. 8 Viscoplastic Anand model for solder alloys and its application (2000) doi:10.1108/09540910010331428