総合半導体 / 車載・産業・パーソナル電子機器 / IDM アナログ、パワー、MCU、MEMS、RF・光半導体を自社製造する欧州系IDM
STMicroelectronics
四つの事業を自社工場で作る欧州IDMの回復を読む
STMicroelectronicsは
車載・産業向けのアナログ、パワー、MCU、センサーを自社工場で作るIDMです。
アナログ・MEMS、パワー、MCU、RF・光通信の四つの事業 を持つ半導体メーカーです。 2026年第2四半期 の売上は5,517億円で前年同期比26.0%増え、前年同期の営業赤字から黒字に戻りました。
- 2026年第2四半期 売上 5,517億円 前年同期比26.0%増、前四半期比12.7%増
- 2026年第2四半期 営業利益 295億円 営業利益率5.4%。 前年同期は−4.8%の赤字でした
- 2026年第3四半期 会社予想 売上 5,854億円 前四半期比6.2%増、粗利益率37.0%を見込みます
2026年第2四半期 セグメント別売上
- AM&S(アナログ・MEMS・センサー)2,256億円
- EMP(MCU・組込み)1,814億円
- P&D(パワー・ディスクリート)734億円
- RFOC(RF・光通信)704億円
- Others7.9億円
この会社の要点
01立ち位置
何の会社として比べるか
STは製品をAM&S、P&D、EMP、RFOCの四つの区分で報告します。 FY2023からFY2025に売上は大きく減り、とくにEMPとP&Dが半分近くまで縮みました。
連結売上と営業利益
連結売上
営業利益
どのセグメントが縮んだか
FY2023 セグメント別売上
FY2025 セグメント別売上
Others 22億円を加えると連結売上になります。
Analog products、MEMS and Sensors(AM&S)
自社のBCD・VIPpower技術によるアナログ・電源ICと、加速度・ジャイロ・圧力などのMEMSセンサー、ToFなどの光学センサーをまとめた区分です。 車載ではバッテリー管理、駆動、ブレーキ、エアバッグ向けの回路を供給します。
- 車載アナログ・電源IC
- MasterGaN / VIPerGaN
- MEMSモーション・環境センサー
- FlightSense光学センサー
Power and Discrete products(P&D)
シリコンMOSFET、SiC MOSFET、IGBT、サイリスタ、整流素子、パワーモジュールと、静電気やサージから回路を守る保護素子の区分です。 GaNパワー素子の品ぞろえを広げています。
- SiC MOSFET
- IGBT
- シリコンMOSFET
- パワーモジュール
Embedded Processing(EMP)
汎用MCUのSTM32、車載MCUのStellar、セキュアMCU・NFC、車載ADAS向けのカスタムSoCをまとめた区分です。 会社はSTM32V8を18nm FD-SOIで作る初のMCUとしています。
- STM32 MCU・MPU
- Stellar車載MCU
- STSECURE / ST25
- ADAS向けSoC
RF Optical Communications(RFOC)
低軌道衛星(LEO)や地上局向けの半導体、BiCMOSとシリコンフォトニクスによるデータセンター向け光接続、RF・ミリ波部品、車載オーディオと測位ICの区分です。
- 宇宙・衛星通信向けIC
- データセンター光接続IC
- RF・ミリ波部品
- 車載オーディオアンプ・GNSS
02収益
どこで、どれくらい儲けているか
2026年第2四半期は営業利益295億円で、EMPが357億円、AM&Sが227億円、RFOCが148億円を稼ぎました。 P&Dは−156億円の赤字です。
売上1兆8,670億円 / 営業利益276億円
親会社帰属純利益は262億円です。 FY2023は売上2兆7,351億円、純利益6,662億円、FY2024は売上2兆995億円、純利益2,463億円でした。
製品群合計1,818億円 / Others −1,541億円
AM&S 985億円、EMP 848億円、RFOC 419億円、P&D −435億円です。 Othersには未稼働費用、リストラ費用、減損などが入ります。
研究開発費3,234億円 / 純設備投資2,917億円
研究開発費は売上の17.3%で、FY2024の3,286億円とほぼ同じ水準です。 純設備投資は補助金などを差し引いた設備購入の支払額です。
売上5,517億円 / 営業利益295億円 / 純利益351億円
粗利益率は34.8%です。 営業利益にはリストラ関連費用など91億円が含まれます。 在庫日数は126日で、前年同期の166日から短くなりました。 純設備投資は647億円です。
第3四半期 売上5,854億円 / 第4四半期 6,329億円超
会社は第3四半期の売上を前年同期比16.2%増、粗利益率を37.0%と見込んでいます。 第4四半期の伸びはAIデータセンターと低軌道衛星通信の顧客案件によるとしています。
2026年第2四半期 セグメント別売上と前年同期比
粗利益率の推移
会社は前年同期からの改善を、未稼働費用の減少と製品構成の改善で説明しています。
03強みとリスク
強みと、リスク・検討点
強みは、工程技術を自社で持ち、SiCを基板から作り、車載の電装を幅広く押さえていることです。 弱みは、工場の未稼働費用とP&Dの赤字が全社の利益を削っていることです。
強み
- 工程技術を自社で持ち、製品の差に変える
BCD・VIPpower、FD-SOI、BiCMOS、シリコンフォトニクスを自社で開発しています。 車載MCUのStellarには、自社開発の相変化メモリ(28nm FD-SOI)を積んでいます。
STMicroelectronics 2025 Form 20-F(連結財務諸表・セグメント) - SiCを基板から作る
スウェーデンのNorrköpingでSiC基板を作り、イタリアのCataniaでは200mm SiCエピ基板とSiCパワー素子を量産する拠点を持ちます。 会社は2024年5月31日に、Cataniaへ200mm SiCの新工場を建てる計画を公表しました。
STMicroelectronics 2025 Form 20-F(連結財務諸表・セグメント) - 車載の電装を幅広く押さえる
車載MCU、ADAS向けSoC、車載グレードのMEMSと画像センサー、電動車向けのアナログ・パワー素子を自社で持ちます。 駆動系、シャシー・安全、車内情報機器、ボディ系まで対象です。
STMicroelectronics 2025 Form 20-F(連結財務諸表・セグメント) - 減収でも研究開発を保った
FY2025の研究開発費は3,234億円で、売上の17.3%です。 売上が減ったFY2024の3,286億円からほぼ横ばいです。 研究開発の従業員は9,461人です。
STMicroelectronics 2025 Form 20-F(連結財務諸表・セグメント)
リスク・検討点
- 工場の未稼働費用が利益を削る
FY2025は四つのセグメントの営業利益合計が1,818億円でしたが、未稼働費用やリストラ費用を含むOthersが−1,541億円で、連結営業利益は276億円まで減りました。
STMicroelectronics 2025 Form 20-F(連結財務諸表・セグメント) - パワー(P&D)の赤字
P&DはFY2025に営業損益−435億円の赤字でした。 2026年第2四半期も売上の伸びは前年同期比3.7%増にとどまり、営業利益率は−21.4%です。
STMicroelectronics Q2 2026 Results(SEC Exhibit) - 最大顧客Appleへの依存が上がっている
Apple向けは連結売上の17.7%(FY2025)で、FY2023の12.3%から上がりました。 会社は売上の季節性もスマートフォン向けの動きと結び付けて説明しています。
STMicroelectronics 2025 Form 20-F(連結財務諸表・セグメント) - 外部委託と関税
FY2025はシリコン生産額の約25%を外部ファウンドリーに委託しました。 会社は米国の半導体関税や中国の輸出規制もリスクに挙げています。
STMicroelectronics 2025 Form 20-F(連結財務諸表・セグメント)
04待遇
給与、初任給、休日、手当
FY2025末の従業員49,157人のうち、製造が62%を占めます。 研究開発は9,461人です。
職能別の従業員数(FY2025末)
05勤務地と職種
どこで、どんな仕事をするか
前工程はイタリア、フランス、シンガポール、後工程はアジアと地中海沿岸にあります。 拠点ごとに扱う工程が違うので、職務は拠点から選ぶと具体的になります。
主な勤務地・拠点
- Crolles、France
- 200mm・300mm。 アナログ/RF、FD-SOI、光学センサー、組込み不揮発メモリの前工程。
- Agrate、Italy
- 200mm・300mm。 BCD、MEMS、GaN統合パワーIC、アナログCMOSの前工程。
- Catania、Italy
- SiCパワー素子、パワーMOS、パワーGaNの前工程と、200mm SiCエピ基板の量産拠点。
- Ang Mo Kio、Singapore
- 150mm・200mm。 BCD、MEMS、パワーMOS、SiCパワー素子の前工程。
- Rousset / Tours、France
- Roussetは汎用・セキュアMCU、Toursは保護素子、整流素子、パワーGaN。
- 後工程拠点
- Calamba、Muar、Shenzhen、Bouskoura、Kirkop、Marcianise、Rennesで組立・テスト。
製品・工程の技術語
- BCD
- MEMS
- SiC
- GaN
- FD-SOI
- STM32
- Stellar
- BiCMOS
- SiPho
- Power module
06これから
会社が次に取りにいくもの
短期は第3四半期と第4四半期の売上と粗利益率、中期はAIデータセンター向け売上、P&Dの赤字縮小、製造拠点の再編が追う点です。
これからの材料
- AIデータセンター
- 会社は2026年に1,582億円超、2027年に3,164億円を大きく超える売上を見込んでいます。 2026年第2四半期決算
- P&D
- 営業利益率は2026年第2四半期で−21.4%です。 SiCとGaNの量産が進むかを四半期ごとに見ます。
- 在庫
- 在庫日数は前年同期の166日から126日に短くなりました。 会社は流通在庫が標準の目標を下回ったとしています。
AIデータセンター向けの電源と光接続
会社はAIデータセンター向け売上を2026年に1,582億円超、2027年に3,164億円を大きく超える水準と見込んでいます。 2027年の見込みは、今の需要と顧客案件が続くことを前提にした会社の見通しです。
2026年下期の売上加速
会社は第3四半期の売上を5,854億円、第4四半期を6,329億円超と見込んでいます。 第4四半期の伸びはAIデータセンターと低軌道衛星通信の顧客案件によるとしています。 第3四半期の予想には上下の幅があり、粗利益率の予想には未稼働費用が含まれています。
NXPのMEMSセンサー事業の取り込み
2026年2月2日に、NXPの車載安全・産業向けMEMSセンサー事業の買収を完了しました。 第1四半期に1,416億円を支払っています。 買収に伴う会計上の費用が、当面の営業利益に含まれます。
製造拠点の再編
会社は製造拠点の再編とコスト削減を全社で進めています。 2026年第2四半期の営業利益には、リストラ関連費用など91億円が含まれます。 再編費用は四半期ごとに営業利益から差し引かれます。
07入口を選ぶ
専攻から、入口を1つに絞る
「車載」という市場名だけで志望を決めず、MCU、パワー、センサー、アナログのどれを担当したいかと、その製品を作る拠点を一組にします。
前工程プロセス・デバイス
Crolles・Agrateの300mm、CataniaのSiC、ToursのGaNなど、拠点ごとに異なる工程を立ち上げ、歩留まりを上げる職種群です。
公式採用情報MCU・組込みソフトウェア
STM32と車載MCUのStellarの回路、ファームウェア、開発ツール、機能安全とセキュリティを担う職種群です。
- Embedded C
- ASIL-D
面接で使う技術語
- FD-SOI
- BCD
- SiC
- GaN
- 300mm
- Analog
- BCD
- MEMS
- GaN
- Sensor
他社との違いを一言で
- 車載パワー・MCU
Infineon
STはSiCを基板(Norrköping)から素子(Catania)まで自社で作り、車載MCUではStellarに自社開発の相変化メモリを積んでいます。
- 車載MCU・センサー
NXP Semiconductors
STは車載安全向けMEMSを自社の製品群に加えています。
- アナログ・電源IC
Texas Instruments / Analog Devices
STのアナログは自社のBCD・VIPpowerプロセスで作り、MEMSセンサーと光学センサーを同じAM&S区分で持ちます。
- SiCパワー半導体
onsemi / ROHM
STはSiC MOSFETとIGBTに加えてGaNパワー素子を広げ、MCUとアナログを合わせて供給できます。