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VOL.04 先端パッケージングの寸法 第 13 回 / 全 42 回

ハイブリッドボンディングのボイド:5 つの発生源と、界面の外まで伸びる剥離

ハイブリッドボンディングのボイドには 5 つの発生源があり、そのうちガルバニック腐食は研磨の工程そのものが作っています。パッド縁の落ち込みを加熱で埋めるのに要る温度は深さに比例して上がるので、落ち込みを 1 nm 以下に抑えれば低温で済みます。

34 分 応用 式 6 図 5 出典 8

この回の目次(8 節)
  1. §1 ボイドの発生源は5つある
  2. §2 銅を突き出させると、窓が両側から挟まる
  3. §3 電池を切る手は、2 方向ある
  4. §4 見つけた欠陥を、どう仕分けるか
  5. §5 異物は、避けるより抱え込む
  6. §6 位置を合わせる方法も変わってきた
  7. §7 低温化のもう1つの道:銅を粒にする
  8. §8 実務での使い方

この回で示すこと

  1. 剥離は接合面を越え、下チップの M1/M2 から上チップの M2/M1 まで伸びていた。
  2. ボイドの発生源 5 か所のうち、ガルバニック腐食は Cu とバリアとスラリーで工程が作る電池。
  3. 縁の落ち込みが埋まる速さは 0.022 nm/K で、5 nm には 255 °C、1 nm 以下なら 71 °C で足りる。
5 nm の落ち込みを埋める温度 255 °C
1 nm 以下の場合 71 °C
埋まる速さ 0.022 nm/K

接合の検査で、未接合の信号が 1 個見つかりました。それは接合面の空隙なのでしょうか。断面を取るまで、その答えは、そこで初めて決まります。答えによって、そのウェーハを流すか捨てるかが動きます。

ハイブリッドボンディングのボイドは、貼り合わせた面にできるものだと思っていました。そこから先がありました。

「ボイドは Cu-Cu 接合界面に限られるのか」を確かめるべく CEY-STXM(変換電子収量・走査透過 X 線顕微鏡)で確かめた 2025 年の報告1があります。題名が「限られるのか」と投げかけ、その答えを題の後半で述べています。銅の L(III) 吸収端 932 eV で、電子が通らずに残る領域を白く写す手法です。

剥離が、下チップの M1/M2 界面から、上チップの M2/M1 界面まで伸びていました。つまり接合面そのものより、その上下の配線層のあいだが剥がれている。基板とP-TEOS酸化膜の界面、酸化膜とバリア(Ti)とM1の界面は無傷のまま。

接合面だけを検査しても、剥離を見逃します。これが1つめの発見です。

図 01
A. 剥離は接合面から縦に抜けていく 上チップ 下チップ Si 基板M2M2Si 基板 P-TEOSTi / M1Ti / M1P-TEOS 接合面 剥離 上 M2/M1 から 下 M1/M2 まで 緑=無傷 CEY-STXM、Cu の L(III) 吸収端 932 eV。 電子が通らずに残る領域を白く写す。 接合面だけを検査すると、剥離を見逃す。 B. 横方向には、5か所から生まれる 上チップ 下チップ 1 2 3 4 5 Cu バリア(Ti / TaN) 1 絶縁膜と、絶縁膜/バリア界面 — 応力によるき裂2 バリアと銅の重なり領域 — 構造的な段差3 Cu-Cu 界面 — 表面粗さ5 銅と絶縁膜の重なり領域 — 構造的な段差 4 銅パッドの縁 — ガルバニック腐食 4 だけ、工程が自分で作っている。 C. 腐食の電池を切ると、縁の落ち込みが消える 超薄膜の金属を銅だけに選択的に付ける 縁の落ち込み 保護なし:ディッシング 5〜7 nm 250 °C 未満での接合も可能に 金属で不動態化:ディッシング 1 nm 以下
左は縦方向。剥離は接合面にとどまらず、下チップの M1/M2 界面から上チップの M2/M1 界面まで伸びています。基板と酸化膜、酸化膜とバリアと M1 の界面は無傷のまま。右は横方向で、ボイドが生まれうる5か所。4番のガルバニック腐食だけが、工程が自分で作っているボイドです。

ボイドの発生源は5つある

銅パッドへ選択的に金属キャップを付けてボイドの無い接合を作った 2025 年の報告2が、通常の Cu/絶縁膜ハイブリッドボンディングでボイドが生まれうる場所を 5 つに切り分けています。

#場所原因
1絶縁膜と、絶縁膜/バリア界面応力によるき裂の進展
2バリアと銅の重なり領域構造的な段差
3Cu-Cu 界面表面粗さ
4銅パッドの縁ガルバニック腐食
5銅と絶縁膜の重なり領域構造的な段差

4番だけ性質が別です。工程が自分で作っているボイドです。

ガルバニック腐食がCMPで起きる理由

異なる金属が電解質の中で接すると、電位の低いほうが溶けます。乾電池と同じ原理です。

銅パッドの周りにはバリアメタル(Ti や TaN)があります。CMPのスラリーは電解質なので、銅とバリアが接している境目へ電池が組まれます。銅のほうが溶ける側に回り、境目が余計に削れます。

だから銅パッドの断面は、中央が皿状に凹むだけでなく、縁が急に落ち込む形になります。この落ち込みは加熱の膨張を当てても残るので、そのままボイドになります。

数字にすると働き幅が出ます。実測で、

  • 保護なしの銅: ディッシング 5〜7 nm。しかも銅とバリアの境目で落ち込みが目立つ
  • 金属で不動態化した銅: ディッシング 1 nm 以下。境目の落ち込みも消える

超薄膜の金属を銅パッドにだけ選択的に付けることで、腐食の電池を切っています。題名がそのまま結論で、低い熱予算で、銅の表面形状と結晶構造によらず、ボイドの無い接合になる、とされています。

「加熱を当てても残る」を、温度の数字にする

ここまでの話の柱は「この落ち込みは加熱の膨張を当てても残る」でした。本当に残るのか、何度あれば埋まるのかは、計算すれば出ます。

銅と絶縁膜の熱膨張差から、必要な温度を出します。使う定数は 2 つだけです。

上下 2 枚のパッドが向かい合うので、加熱で埋まる隙間は片側の 2 倍です。

これが 以上になる条件を について解くと

分母は定数です。 nm/K。つまり 1 K 上げても 0.022 nm どまりしか空いたまま残る。

縁の落ち込み 要る 室温 25 °C からの到達温度
7 nm(保護なしの悪い側)322 K347 °C
5 nm(保護なしの良い側)230 K255 °C
1 nm 以下(金属で不動態化)46 K71 °C

接合後アニールは 250 °C です。5 nm の時点でもう手前で止まります。保護なしの 5〜7 nm は、通常のアニール温度では構造的に空いたまま残る範囲に丸ごと入っている。「加熱を当てても残る」は言い回しより、0.022 nm/K という傾きから出る結論でした。

1 nm 側の 71 °C が、この節でいちばん大事な数字です。落ち込みを 1 nm 以下にすると、埋めるのに要る温度が接合後アニールの 3 分の 1 以下まで下がる。報告の題名に「低い熱予算で」が入っているのは、歩留まりが上がったという話より、温度の予算が余ったという話です。腐食対策と低温化が、同じ 1 つの傾きでつながっています。

図 02
加熱で埋まる隙間は、1 K あたり 0.022 nm どまり 埋まる隙間 δ(nm) 02468 接合後アニール 250 °C 250 °C で埋まるのは 4.9 nm まで d = 7 nm → 347 °C(保護なし・悪い側) d = 5 nm → 255 °C(保護なし・良い側) d = 1 nm 以下 → 71 °C(金属で不動態化) 1 nm 5 nm 7 nm 傾き 0.0218 nm/K(1 K で 0.022 nm) 25100200300 室温 25 °C からの到達温度(°C) 5〜7 nm は 250 °C では構造的に空いたまま残る。1 nm 以下なら 71 °C で埋まる。
加熱で埋まる隙間は温度に比例しますが、傾きが 0.0218 nm/K どまりので、250 °C のアニールで稼げるのは 4.9 nm までです。保護なしの 5〜7 nm はその線より上にあって届かず、1 nm 以下なら 71 °C で埋まるので温度の予算がまるごと余ります。

銅を突き出させると、窓が両側から挟まる

前の節で を 1 nm 以下まで下げました。では、 をゼロの向こうへ——負まで持っていったらどうなるのか。

銅パッドの密度が Cu-CMP と接合歩留まりへ与える影響を調べた 2024 年の報告3が、そちら側を相手にしています。

工程は 2 段のダマシンでした。まず RDL を作ります。SiN と TEOS 酸化膜を CVD で積み、レジストを敷き、めっきし、エッチングし、ダマシンでめっきして CMP。そのうえに HBI パッド(hybrid bonding interface pad、接合界面のパッド)を作ります。HB パッド用の酸化膜を積み、パターニングし、ダマシンでめっきして、もう一度 CMP。

接合される面は、2 段目の CMP の出口です。1 段目の CMP がすでに作った起伏の上に、2 段目が載る。5 分類の 2 番と 5 番——バリアと銅、銅と絶縁膜の重なり領域の段差——が、ここで 2 回ぶん積み上がる構造になっています。

最適化された CMP 条件が、この記事の の符号を反転させています。

3 µm の HBI パッド、SiCN の絶縁膜、Cu の突き出し 0〜1 nm。ディッシングとは逆向きの、突き出し(protrusion)です。この条件で、位置合わせも含めて完全なハイブリッドボンディングになった、と報告されています。

突き出した銅は、どこへ行くのか

が負なら も負です。室温でもう接している。ここまでは素直です。

素直に運ぶのはここまでです。接している面を 250 °C まで上げても、銅は膨張を続けます。上下 2 枚ぶんの伸びは、同じ傾きで

最初から出ていた 1 nm と合わせて、およそ 5.9 nm。この高さぶんの銅が行き場を探します。下は絶縁膜とバリアで塞がっていて、上は相手の銅です。残るのは横だけです。横は、5 分類の 2 番(バリアと銅の重なり領域)と 5 番(銅と絶縁膜の重なり領域)が住んでいる場所です。

この読みでよさそうなことは、挙げられている合格条件そのものが示しています。最適化した条件の C2W 接合を FIB-SEM で見た結果として、3 つが並べられています。縁のボイドが無い、バリアスパイクが無い、HBI パッドの位置が完全に合っている。

「バリアスパイクが無い」がわざわざ合格条件に入っているのが答えです。バリアスパイクは、バリアが押されて突き出た形のこと。押しているものが要ります。突き出しを持たせる設計は、隙間を消すかわりに、余った銅をバリアへ当てる設計でもあります。

だから突き出しは「ディッシングの逆をやればいい」という一手で片づく話から離れます。窓が 0〜1 nm と狭いのは、下限がゼロ(接触の保証が消える)で、上限が 1 nm(押される側が耐えきれる限界)だからと受け取るのが素直です。ディッシング側の窓が「深すぎると空いたまま残る」の片側だけで決まっていたのに対し、突き出し側の窓は両側から挟まれます。(窓の上限の理由は、出典には書かれていません。この受け取り方はこちらの推論です。)

「最適化した CMP」の中で、動いている変数は 2 つある

最適化する前の像も出ています。Ti バリアで CMP を最適化する前の条件では、Ti と Cu の界面に銅のマイクロトレンチ(微小な溝)ができる。

4 番がまた出てきました。冒頭で見た「銅パッドの縁の落ち込み」を、別の試験体の別の断面で、もう一度見ていることになります。Ti と Cu という電池の組み合わせも同じです。

最適化後の像には、Ta バリアと書かれています。

ここは注意して読んでください。改善の理由は「最適化された CMP 条件」とされていますが、最適化前の図は Ti バリア、最適化後の図は Ta バリアです。動いている変数が 2 つあります。CMP の条件と、バリア金属と。

これが乗るのは、この記事がまさにガルバニック腐食の話をしているからです。Cu-Ti と Cu-Ta は別の電池です。電極が変われば、縁の溶け方も変わります。「CMP を最適化したらマイクロトレンチが消えた」と受け取ると、電極を替えたぶんまで CMP の手柄にしてしまいます。

自分のラインへ持ち込むときは、バリアが Ti のままなのか Ta なのかを先に揃えてから、CMP 条件の比較に入ってください。揃えて初めて、同じ図から同じ結果が出ます。

スケーラビリティのほうは、密度から出る

論文の題名の前半は「スケーラビリティ」です。C2W 接合の FIB-SEM が 3 条件ぶん並んでいます。

HBI パッド径ボンドピッチパッド径 ÷ ピッチ
3 µm6 µm0.50
5 µm10 µm0.50
1 µm2.4 µm0.42

(3 行目は本文が 2.4 µm、図の見出しが 2.5 µm と食い違っています。ここでは本文の値を採りました。)

どれも位置合わせは完全だった、と書かれています。ここで測るべきは、ピッチが 10 µm から 2.4 µm へ約 4 倍詰まったことより手前にあります。パッド径とピッチの比が、ほとんど動かずに残っていることです。

比が変わらないなら何が同じままなのか。銅の面積率です。正方格子に円形パッドを並べたとき、単位面積に占める銅の割合は

6 µm と 10 µm は、銅の面積率が同じです。エロージョンがパターン密度で決まる点を重ねると、この 2 条件は CMP から見れば同じ 1 点になります。ピッチが 1.67 倍ずれるだけで、削る側にかかる負荷は変わらない。2 点あるように映って、独立な密度点は 1 つです。

2.4 µm の条件だけ、比が 0.42 へ落ちています。面積率で 19.6% から 13.6% へ、3 割の減。細いところで銅を痩せさせている。

痩せさせる理由は、縁にあります。マイクロトレンチも、ガルバニック腐食の落ち込みも、パッドの縁に沿って出るものでした。幅 の縁の帯が、直径 のパッドの面積に占める割合は

で乗ります。物理的に同じ幅の溝でも、パッドが細るほど食う割合が増える。仮に µm と仮定すると(この幅は出典の値より、こちらで仮定した値です)、

  • µm なら 、つまり 13%
  • µm なら 、つまり 40%

3 µm パッドなら「縁が少し傷んでいる」で済むものが、1 µm パッドでは接合面の 4 割になります。題名が「スケーラビリティとプロセス最適化」で並んでいる理由がここです。最適化は細いパッドを良くするための改善より、細いパッドを成り立たせるための前提条件でした。

これは、1 つ前の 0〜1 nm の窓とも噛み合います。縁の手当てが手つかずのパッドで突き出しを作ると、余った銅が向かう先は、すでに傷んだ面です。縁を直すことと、突き出しを許すことのあいだには、順番があります。

図 03
A. 室温で接している面を 250 °C まで上げると、銅が 5.9 nm 余る 0〜1 nm 行き場は横だけ → バリアスパイク (突き出し 0〜1 nm。上下 2 枚ぶんが向かい合う) 室温でもう接している(d が負) 250 °C まで上げると、上下 2 枚ぶんで 0.0218 × (250 − 25) = 4.9 nm 最初の 1 nm と合わせて 5.9 nm 下は絶縁膜とバリア、上は相手の銅。 残るのは横だけ。だから窓は 0〜1 nm。 B. 縁の欠陥は 4w/D で乗る。細るほど、同じ幅の帯が食う割合が増える D = 3 µm D = 1 µm 縁の帯 = 13% 縁の帯 = 40% 4w/D = 0.4 / 3 = 13% 4w/D = 0.4 / 1 = 40% パッド径 ÷ ピッチ 3/6 = 0.50、5/10 = 0.50、1/2.4 = 0.42 銅の面積率 19.6% → 13.6%(3 割減) (直径をそろえて描いている。帯の幅 w = 0.1 µm は本文が仮定した値)
突き出した銅は室温でもう接しているので、250 °C まで上げたぶんの 4.9 nm は縦への逃げ場を失い、最初の 1 nm と合わせて横へ回ります。その横がパッドの縁で、同じ幅の帯でも 3 µm パッドなら 13%、1 µm パッドなら 40% を食うため、細るほど先に縁を直しておく必要があります。

電池を切る手は、2 方向ある

ガルバニック腐食の要素は 3 つです。2 種類の金属(電極)、電解質、そして接触時間。どれか 1 つを断てば反応は止まります。

電極を替える手と、電解液と時間を管理する手が、そこから出ます。

手具体向いている場面
電極を替えるCu パッドだけへ超薄膜金属を選択的に付け、電池そのものを切る2。ディッシング 5〜7 nm → 1 nm 以下材料と工程を触れる側
電解液と時間を管理するスラリーの pH と、銅がスラリーへ触れている時間を仕様に入れる既存ラインを走らせたままの側

電位差を左右するのは金属の組み合わせですが、反応の速さを左右するのは電解液の pH と接触時間です。「CMP のスラリーは電解質だ」というところまで書いた仕様書に pH と滞留時間の欄が無いなら、いちばん直接効くノブが管理されていません。

接合の前処理も、この形をしています。プラズマで活性化し、そこへ DI 水を吹く。プラズマのあとに液体が来るという順番は、金属エッチ後の洗浄と同じです。電荷を帯びた面が電解液へ触れる工程は、接合の前後どちらにも出てきます。前処理の位置づけを「活性化できたか」だけで空いたまま残るほうがいい。

見つけた欠陥を、どう仕分けるか

冒頭の CEY-STXM の報告1が突きつけたのは、平面の像のままでは仕分けが止まるという事実でした。インラインで見つかる欠陥は、ふつう 3 つに仕分けます。キラー(機能を壊す)、ノンキラー(性能を落とす)、ニューサンス(見た目だけ)。検査機の使い分けも定石があって、CMP や成膜のあとの平坦な面は暗視野、構造のある層は明視野。

ここが、この記事の最初の発見と噛み合います。接合面は「CMP のあとの平坦な面」なので、暗視野で測る対象です。ところが剥離は M1/M2 のあいだまで伸びていました。そこは平坦面の検査機の視野の外です。つまり、同じ 1 個のボイド信号が、界面にとどまる空隙なのか、配線層まで届いた剥離なのかを、平坦面の検査のままでは仕分けの手前で止まる。キラーかノンキラーかの合否に、断面が要るということになります。

5 分類の重みは、工程の成熟度で動きます。プロセスウィンドウが固まりきる前は、原因がプロセス側に集まる。窓が固まれば、残るのは装置と粒子です。投資の順番を確定するときは、自分の工程がどちらの段階にいるかを先に切り分けてください。

異物は、避けるより抱え込む

もう1つの発生源がパーティクルです。接合面に粒子が1個挟まると、そこを中心に円形のボイドが広がります。C-SAM(超音波顕微鏡)の像では、チップの内側に出るものと、チップの縁に沿って出るものの両方が白く写ります。縁のほうは、機械ダイシングで切ったときの屑が回り込んだものです。

機械ダイシングを使う限り、切断時の粉はついてきます。ここで答えが割れます。

ナノ粒子化銅と感光性アクリル接着剤で低温のポリマーハイブリッドボンディングを組んだ 2024 年の報告4の答えは、粒子を無くす競争から降りて、埋まる材料へ変えるというものでした。低温硬化のポリマー絶縁膜を接合層に使い、粒子やダイシング屑が来たらそのまま抱え込む構造にしています。酸化膜どうしだと硬くて逃げ場が無く、粒子1個が広い剥離を作るのに対して、ポリマーなら局所で収まる。

材料の数字が、その「柔らかさ」を裏づけています。開発された絶縁膜は、硬化条件が 230 °C で 60 分(設計目標は 250 °C 未満)、Td5(5% 熱分解温度)が 350 °C、CTE 55 ppm/K、破断伸び 100%、弾性率 1.7 GPa。この材料の設計方針は低弾性率型と書かれています。粒子が来たときに、まわりが逃げてくれる側へ振っている。

図 04
A. 酸化膜どうし:硬いので逃げ場が無い B. ポリマー:そのまま抱え込む 剥離が横へ広がる 局所で収まる 粒子(機械ダイシングの屑を含む) アニール 300 °C 以上 ピッチ 1 µm からサブミクロン 粒子への感度:非常に敏感 硬化 230 °C で 60 分(設計目標 250 °C 未満) Td5 350 °C、CTE 55 ppm/K 弾性率 1.7 GPa、破断伸び 100%(低弾性率型) ピッチ 3〜20 µm 清浄度で殴る道から降りて、材料で抱え込む。そのかわり、サブミクロンの手前で止まる。
同じ 1 個の粒子でも、硬い酸化膜どうしでは逃げ場が無いので剥離が横へ広がり、弾性率 1.7 GPa のポリマーなら押しのけられた材料が逃げて局所で収まります。粒子を無くす競争から降りられるかわりに、ピッチは 3〜20 µm までで、サブミクロンの手前で止まります。
ポリマー接合は、この記事の温度の式から降りている

酸化膜系とポリマー系を一覧にすると、アニール温度を決める理由はそれぞれ異なります。

酸化膜 ― 銅ポリマー ― 銅
バンプピッチ1 µm からサブミクロンCu パッドの位置合わせ 3〜10 µm
粒子への感度非常に敏感抱え込む
アニール温度300 °C 以上230〜250 °C
その温度が要る理由銅を膨張させ、CMP のディッシングで空いた隙間を橋渡しさせるためポリマーの硬化と共有結合の形成、および銅の拡散のため
プラズマの目的酸化膜の表面を活性化する銅バンプの表面の酸化銅を落とす
想定用途1 µm 以下のロジック/SRAM3〜20 µm の HBM・多段スタック

「300 °C 以上」の理由が、この記事で計算した式そのものです。酸化膜系は、CMP が作った隙間を銅の熱膨張で埋めることになる。だから が乗り、 が大きいほど温度が要る。

ポリマー系はそこから降りています。突き出た銅バンプが、仮圧着(タッキング)の時点ですでに相手の UBM に触れている。埋めるべき隙間が最初から無いので、銅の膨張へ頼らずに組める。残る 230〜250 °C は、ポリマーを硬化させて共有結合を作るための温度であって、隙間を埋めるための温度とは別ものです。

ついでに、この構成では の符号が反転します。ポリマーの CTE は 55 ppm/K で、銅の 16.5 ppm/K より大きい。加熱すると絶縁膜のほうが速く伸びるため、そもそも「銅が追いつく」という描像のほうが崩れます。温度で隙間を埋める設計と、温度以外で隙間を消す設計は、同じ式には載せられません。

工程の流れにも、粒子が正面から入っています。材料を選び、試験体を設計し、ウェーハを作り、機械ダイシングで切ってから、AOI(自動光学検査)で接合面の粒子を走査する。そのうえでプラズマと DI 水で洗い、仮圧着へ渡す。粒子を「起きなかったこと」にする工程は、工程表のどこからも抜けています。試験体は 6 mm × 13 mm のメモリチップで、300 mm シリコンウェーハへ載せます。メモリ側はポリマーを塗ってから CMP。

結果は、Cu-Cu の結線にボイドが出ず、デイジーチェーンのメモリチップが正しく貼れた、というものでした。

清浄度で殴る道から降りて、材料で抱え込む。ダイシングした実チップを使う前提なら、こちらのほうが現実的だという線引きです。そのかわり、ピッチはサブミクロンの手前で止まります。表のいちばん上の行がその代償で、ポリマーは 3〜20 µm、酸化膜は 1 µm 以下と用途が割れています。粒子耐性と微細ピッチが、ここでも交換になっています。

位置を合わせる方法も変わってきた

ボイドと並ぶもう1つの歩留まり要因が位置合わせです。ここも面白い方向へ動いています。ただしこの節は見取り図です。4 本とも 1 本で 1 記事になる中身があるので、ここでは「ボイドのほかにどの軸があるか」を知るところまでにとどめます。深さが要るときは、下に挙げた原典へ直接当たってください。

ウェーハが平らだという前提の外から始まる。サドル形(鞍形)に反ったウェーハの W2W 接合を追った 2025 年の報告5があります。題名がそのまま条件を述べていて、反っているものをどう貼るかへ問題が移っています。

接合波の速さまで設計対象になる。素子構造が接合波とひずみへ与える影響をシミュレーションした 2023 年の検討6が、そちらの軸です。押し当て方の形状が歩留まりに乗る、という粒度になっています。

一時基板と接着剤が、そのままオーバーレイ誤差になる。一時基板と接着剤が D2W のオーバーレイへ与える影響を分解した 2025 年の報告7があります。接着剤の選択が位置精度の項目に入る、というのは意外でした。

流体で自分を合わせに行く。はんだのセルフアライメントを、別の形で取り戻そうという手もあります。チップと下地へ疎水性のコーティングを施し、液体の表面張力でチップを所定の位置へ引き込む(fluidic self-alignment)。載せる速度を上げられるので、D2W のスループットが上がる。

低温化のもう1つの道:銅を粒にする

もう 1 本、変わった方向から低温化を狙う報告があります。自己ナノ粒子化銅(SNP)です。低温ハイブリッドボンディングのための自己ナノ粒子化した Cu-Cu の結線を測った 2025 年の報告8がそれにあたります。

工程はこうです。シングルダマシンで銅パッドを作り、そこへ自己ナノ粒子化剤を滴下し、窒素雰囲気で加熱してから、フリップチップで貼る。加熱(180 °C/5分、または 150 °C/5分 → 200 °C/5分)のあいだに薬剤の成分が揮発し、銅ナノ粒子が生成して、目標のサイズまで育ちます。そのうえで 200 / 250 / 350 °C で熱圧着する。

加熱後の表面についての記述が、この記事の 3 番と真正面から噛み合います。SNP のあとの面はもうスクラッチを示さず、数十から数百 nm の粒で覆われている。5 分類の 3 番は「Cu-Cu 界面の表面粗さ」でした。CMP はそれを削って消しにいき、SNP は粒で覆って埋めにいく。同じ発生源に、逆向きの手を当てています。

試験体の寸法もたどっておきます。上チップ 7.3 mm 角、下チップ 12.0 mm 角、どちらも 725 µm 厚の 8 インチシリコンウェーハから作る。上チップは SAP(セミアディティブ)で立てた直径 20 µm・高さ 20 µm・ピッチ 40 µm の銅ピラー、下チップは直径 20 µm・ピッチ 40 µm の銅パッド。1 対のチップで 28,224 対の結線を持ちます。

ピッチ 40 µm です。ここが乗ります。ポリマーの節で見た表が 3〜20 µm、酸化膜系がサブミクロンを狙っているのに対し、SNP はさらに粗い側の土俵で低温を取りに行っている。「低温化」と一言でくくると同じ競争に映りますが、3 つは別のピッチ帯に住んでいます。比べるときは、温度だけでなくピッチを並べてください。

図 05
「低温化」は 3 つあるが、住んでいるピッチ帯が別 接合/アニール温度 200 °C250 °C300 °C 酸化膜系(通常):300 °C 以上、サブミクロン 金属キャップ 250 °C 未満 サブミクロン ポリマー 230〜250 °C SNP 200 °C ピッチ 40 µm 0.3131040 パッドピッチ(µm、対数目盛) 温度だけを一列に並記すると、土俵の別な乗り換えを検討してしまう。
温度を縦軸、ピッチを横軸に取ると、3 つの低温化が別々の場所に散らばります。金属キャップはサブミクロンで 250 °C 未満、ポリマーは 3〜20 µm で 230〜250 °C、SNP は 40 µm で 200 °C なので、温度だけを一列に並記すると土俵の別な乗り換えへ踏み出してしまいます。

温度のほう。熱圧着の下限が 200 °C で、この記事が計算した接合後アニールの 250 °C より低い。銅を膨らませて隙間を埋めるより、最初から粒で埋めているからです。

普通の Cu-Cu ハイブリッドボンディングは、平らな面どうしを密着させて原子を拡散させます。SNP は逆で、わざと粒にして、粒どうしの焼結で埋める。表面が多少荒れていても粒が隙間を埋めるので、要求される平坦度が緩みます。

ここまでで、隙間への向き合い方が 3 つ出そろいました。熱で埋める(酸化膜系。 が乗る)、隙間を先に消す(選択的な金属キャップ。 を 1 nm 以下へ)、埋める(ポリマーと SNP。 の外側へ出る)。この記事で計算した式が乗るのは 1 つめだけで、残る 2 つは式に乗らない設計です。どれを選ぶかは、狙うピッチが決めます。

実務での使い方

ボイドの検査を接合面だけに絞ると、視野から漏れます。剥離が M1/M2 界面まで抜けていた断面1が、その実例です。剥離は上下の配線層まで伸びうるので、断面観察の視野をそこまで広げる必要があります。

CMPの仕様に、ガルバニック腐食の項目が要ります。銅とバリアの境目の落ち込みは、平均のディッシング値には表れません。5〜7 nm と 1 nm 以下の差が、そのまま歩留まりの差になります。項目は3つ書いてください。電極(バリアと Cu の組み合わせ)、電解液の pH、接触時間。材料へ手を入れにくいラインでは、残るのは後ろの 2 つです。

清浄度の要求は、材料で下げられます。接合層をポリマーにする選択肢があるなら、パーティクル管理へ投じる費用と天秤にかけられます。ただし交換相手はピッチです。ポリマーは 3〜20 µm、酸化膜はサブミクロン。狙うピッチを先に確定してから、粒子対策の手を選んでください。

リセスと突き出しは、同じ軸の両側ですが、壊れ方が別です。リセス側の失敗は「空いたまま残る」、突き出し側の失敗は「押しすぎる」。突き出しへ振るなら、管理項目にバリアスパイクと縁のボイドを足してください。平均の高さだけを見ていると、両方とも視野から漏れます。

バリアの金属種を揃えてから、CMP 条件の比較へ入ってください。Ti と Ta では電池が別です。改善が CMP の手柄なのか電極の手柄なのかは、揃えて初めて切り分けられます。

「低温化」を比べるときは、必ずピッチを添えてください。選択的な金属キャップ(250 °C 未満)、ポリマー(230〜250 °C)、SNP(200 °C)は、それぞれサブミクロン・3〜20 µm・40 µm と別の帯にいます。温度だけを一列に並記すると、土俵の別な乗り換えへ踏み出してしまいます。

削る精度の話と合わせると、この工程で管理する量は「銅のリセス」「絶縁膜の縁の形」「銅とバリアの境目」「粒子」「反り」「載せる位置」の 6 つになります。

上の が追っているのは、銅が届くかどうかだけです。銅が届いて導通が出ても、そこから絶縁膜が接合したことまでは手前で止まります。この記事で数えた 5 か所のうち、1 番と 5 番は絶縁膜側の空隙なので、導通試験にはまったく手前で止まります。電気で合格したロットの中に残るのは、そこです。

出典

  1. 1 Mariappan ほか, Are Voids Restricted to Cu-Cu Bonding Interface? Truth Revealed by Conversion Electron Yield-Scanning Transmission X-Ray Microscopy (2025) doi:10.1109/ectc51687.2025.00222
  2. 2 Cheemalamarri ほか, Novel Selective Metal Capping on Cu pad Enabling Void-Free Hybrid Bonding at Low Thermal Budgets, Irrespective of Cu Topography and Microstructure (2025) doi:10.1109/ectc51687.2025.00102
  3. 3 Mariappan ほか, Impact of Cu Pad Density on Cu-CMP and Bonding Yield for Chip-to-Wafer Hybrid Bonding (2024) doi:10.1109/3dic63395.2024.10830177
  4. 4 Sakamoto ほか, Low-Temperature Polymer Hybrid Bonding with Nanoparticulated Cu and Photosensitive Acrylic Adhesive (2024) doi:10.1109/ectc51529.2024.00140
  5. 5 Kang ほか, Wafer-to-Wafer Bonding with Saddle-Shaped Wafers (2025) doi:10.1109/ectc51687.2025.00347
  6. 6 Hirano ほか, Simulation of device structure impacts on bonding wave and strain in Wafer-to-Wafer Cu-Cu Hybrid Bonding (2023) doi:10.1109/ectc51909.2023.00224
  7. 7 Kennes ほか, Impact of Temporary Substrates & Adhesives on Die-to-Wafer Overlay (2025) doi:10.1109/ectc51687.2025.00330
  8. 8 Kawashima ほか, Characterization of Self-Nanoparticulated Cu-Cu Interconnection for Low-temperature Hybrid Bonding (2025) doi:10.1109/ectc51687.2025.00023