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講座集 / 信頼性と試験の統計 / 第 5 回

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VOL.05 信頼性と試験の統計 第 5 回 / 全 31 回

面積スケーリングの前提:Poisson の仮定が崩れると指数が 2 割ずれる

小さな TEG の故障率を製品の面積へ換算する式は、欠陥がばらばらに独立して起きることを前提にしています。面積を 100 倍まで変えて測ると実測はこの前提から外れるので、欠陥の固まりを取り込んだ負の二項分布で換算し直します。

30 分 標準 式 27 図 5 出典 11

この回の目次(12 節)
  1. §1 ずれているのは指数
  2. §2 縦の変換と、横の変換
  3. §3 負の二項を、面積スケーリングの式として使う
  4. §4 必要な試験面積が式で出る
  5. §5 混合分布まで拡張されている
  6. §6 Weibull を置き換える候補が出ている
  7. §7 は、当てはめて求める数より膜厚で決まる量
  8. §8 の推定は、故障数が小さいと楽観側へ傾く
  9. §9 2割のずれが、どこでいくらになるか
  10. §10 という数字は、どこから来るか
  11. §11 面積で壊れるモデルは、寸法でも壊れる
  12. §12 実務での使い方

この回で示すこと

  1. 面積換算の式 は単位面積どうしの独立を前提にし、実測では 3 群が扇状に開いたまま残る。
  2. 同じデータから が 1.48 と 1.75 の 2 通りに出て、100 倍の面積換算で 62%、10 ppm への換算を続けると 5.4 倍の差になる。
  3. の推定は故障数が少ないと楽観側に傾き、 で 20 個なら ±35%。
面積スケーリングの指数のずれ 2 割
面積換算と 10 ppm 換算を続けたときの差 5.4 倍
故障 20 個での β の推定幅 ±35%

スクライブラインの小さな TEG で測った寿命から、面積が 100 倍ある製品の寿命を言えるでしょうか。当たり前にやっている操作ですが、この換算は何を仮定しているのか。

スクライブラインの小さなTEGで測って、製品のチップ面積へ換算する。当たり前にやっている操作です。

この換算が実測から離れることが、示されています。

面積を 1倍・10倍・100倍に振った3群で故障時刻を測り、Poissonモデルで1つの基準面積へ正規化する。理屈どおりなら3群が1本の曲線に重なるはずです。

開いたままです。

図 01
A. 1・10・100 倍を正規化しても、1 本へ収まらずに開く ln[−ln(1−F)] ln t(故障時刻) 1 倍 10 倍 100 倍 縦の変換 横の変換 縦(確率)に動かしても、横(時間)に動かしても開いたまま Poisson の面積スケーリングが不十分 原因は、欠陥が固まって分布していること(クラスタリング) B. 同じ β が 2 通り出る 1.48 1.75 1.48:分布の当てはめから 1.75:面積スケーリングから逆算 2 割の開き。1/β の指数に乗るので、 面積比が大きいほど換算が離れる 対策:クラスタリング係数 φ を持つ負の二項へ φ → ∞ で Poisson に戻る C. β の推定は、少数サンプルだと楽観側へ偏る 1.60 4.21 20 個ずつ 25 群から出る β の範囲 真値 2.5 25 群を合成した 500 個で 2.41 234 β 狭い窓に入るのは上のパーセンタイルだけで、β は大きい側へ出る。10 ppm への外挿で、寿命が長い側へ出る。
面積を 1・10・100 倍に振った 3 群を Poisson で 1 つの基準面積へ正規化しても、Weibull プロットの 3 本は 1 本へ収まらずに開く。縦に動かしても横に動かしても開きが残るので、崩れているのは動かし方の式より「欠陥が一様」という前提のほう。同じ β が 1.48 と 1.75 の 2 通りに出る 2 割の開きが、その代償です。

ずれているのは指数

面積換算の式を、Poisson から出しておきます。あとで「どこが壊れたか」を名指しできるようにするためです。非一様な誘電体破壊をクラスタリングの統計で追った 2013 年の論文1が、この面積スケーリングの性質を正面から測っています。

Poisson が言っているのは「欠陥が互いに独立に、一様な密度でばらまかれている」ということです。すると面積 の領域が無傷である確率は、単位面積が無傷である確率の 乗になります。

この 1 行が仮定のすべてです。この掛け算が通るのは、単位面積どうしが独立なときだけです。

単位面積の分布を Weibull として を入れると、

右端の形が、また Weibull です。傾き は変わらず、尺度だけが へ縮む。2 つの面積で比を取れば

が指数へ入るのは、Weibull の中で が 乗されているのを解いた結果です。面積は 乗の外側に掛かるので、 乗根の形で入ってくる。 が小さいほど が大きく、傾きが寝ている分布ほど面積の影響を強く受ける。

同じ導出から縦の変換も落ちてきます。上の の両辺に を施すと なので、2 つの面積の差はそのまま です。後で出てくる縦の変換の式は、この 1 行と同じものです。

実務でもこの式は、 の形でまず書かれます。この式はいつも他の因子と組みで使われます。

面積換算は、3 つの外挿のうちの 1 つ

TEG は製品より高い電界と高い温度で測ります。短時間で壊してデータを取るためです。だから測定値を製品条件へ運ぶには、面積のほかに電界と温度も元の条件まで換算することになります。3 つは 1 本の式にまとまります。

3つの因子が掛け算で並んでいます。温度のアレニウス項、電界の加速項、そして面積項。この記事が壊れていると言っているのはいちばん右の1つだけですが、掛け算なので、右端の誤差はそのまま全体の誤差になります。左の 2 つをどれだけ丁寧に較正しても、右端の が 2 割ずれていれば、答えは 2 割の指数ぶんずれます。

運ぶ先も具体的です。TDDB の信頼性目標は、使用電圧の 110%、125 °C、10 年。ここまで運んでから の規格へ翻訳します。

図 02
A. TEG から製品へ運ぶのは、3 つの因子の掛け算 TEG 高電界・高温 小面積 温度 アレニウス項 生き残る × 電界 加速項 生き残る × 面積 面積比の 1/β 乗 ここが壊れている 製品条件 使用電圧の 110% 125 °C、10 年 掛け算なので、右端の誤差はそのまま全体の誤差になる。 左の 2 つをどれだけ丁寧に較正しても、1/β が 2 割ずれれば答えは 2 割の指数ぶんずれる。 B. 同じ面積 100 倍でも、β しだいで換算係数が動く β = 1.48(分布の当てはめ) 22.5 倍 β = 1.75(面積スケーリング) 13.9 倍 β = 10(Vbd 試験) 1.6 倍 → 換算は省ける 面積換算が要るかどうかは、試験の種類より β の大きさが左右している。
TEG の測定を製品条件へ運ぶ式は、温度・電界・面積の 3 因子の掛け算で、この記事が壊れていると言っているのはいちばん右の 1 つだけ。掛け算なので右端の誤差はそのまま全体の誤差になり、左の 2 つをどれだけ較正しても、そこは変わりません。しかも右端の指数は 1/β なので、同じ面積 100 倍が β = 1.48 で 22.5 倍、1.75 で 13.9 倍、β = 10 なら 1.6 倍どまり。面積換算が要るかどうかは試験の種類より β が左右しています。
なら面積換算を省ける、という例外

同じ考え方から、面積換算を省ける試験が出てきます。(絶縁破壊電圧)です。

理由が、この記事の主題の裏返しになっています。 試験の は大きい。分布が立っているので が小さく、面積を何桁振っても はほぼ横ばい。だから換算を省けます。

同じ物理、同じ式、同じ膜。別なのは の大きさだけです。TDDB のように が 1.5 前後だと が 0.7 近くあり、面積 100 倍が 20 倍前後の寿命差になる。 が 10 あれば 倍どまりで、測定ばらつきに埋もれます。

「面積換算が要るかどうか」は、試験の種類より が左右している。 が小さい試験ほど、換算が大きく乗り、かつ の推定誤差も乗ります。面倒な換算が要る場面ほど、換算の材料が不確かになる。

指数に入れる が、2通り出る

ここまでで、外挿の鎖のうち面積項だけが を必要とすることが分かりました。その が、2通りの方法で求まるはずなのにずれます。ある極薄酸化膜の例では、

  • 分布の当てはめから出る = 1.48
  • Poisson面積スケーリングから逆算した = 1.75

2割の開き。この差は の指数に乗るので、面積比が大きいほど換算結果が離れていきます。

原因は欠陥が固まって分布していること、つまりクラスタリングです。

縦の変換と、横の変換

正規化の方法は 2 通りあります。同じ 2013 年の論文1は、面積スケーリングと低パーセンタイルのスケーリングを分けて調べ、高パーセンタイル側では非一様な面積スケーリングが支配し、信頼性予測に関わる低パーセンタイル側ではモデルが最弱リンクの性質へ復帰すると書いています。軸によって振る舞いが別、という指摘です。

縦の変換(vertical transformation)。Poissonモデルで累積確率を面積比で補正する。

横の変換(horizontal transformation)。故障時刻そのものを面積比で換算する。

どちらでも 3 本の曲線は扇状に開いたままです。Poisson の面積スケーリングが使える範囲は、ここまでという結論になります。

縦と横で、何を動かしているのか

Weibull確率プロットは、横軸が時間の対数、縦軸が です。

縦の変換は、各点を上下に動かします。面積が違えば同じ時間でも故障確率が別なので、確率の軸で補正する。

横の変換は、各点を左右に動かします。面積が違えば同じ確率に達する時間が別なので、時間の軸で補正する。

理屈が正しければ、どちらで動かしても 3 本が 1 本へ収まるはずです。開いたままだということは、動かし方の式そのものが実態から離れている。どちらの軸で補正しても開きが残るので、モデルの前提(欠陥が一様)を疑うことになります。

負の二項を、面積スケーリングの式として使う

そこで負の二項分布を持ち込みます。欠陥の固まり具合を式へ入れる形は、集積回路の欠陥感度をモデル化した 1983 年の古典2と、歩留まりモデルの使われ方をまとめた総説3が歩留まりの側で確立したものです。

が面積 における欠陥の平均個数、 がクラスタリング係数(、大きいほど一様)。 で Poisson に戻ります。

歩留まりモデルとして使う式と、形は同じです。使う場所が別です。従来は「 から歩留まりを求める」ため。ここでは「小さい面積の実測を大きい面積へ運ぶ」ため。

必要な試験面積が式で出る

この形にしておくと、逆算が通ります。歩留まりモデルの総説3が相手にしているのは歩留まりの予測ですが、同じ式を試験計画の側から解く道もあります。欠陥密度 を信頼度 で抑え込むのに要る総試験面積が

で出ます。 として、信頼度 60% / 90% / 95% での必要面積が、Poissonと負の二項で比較されています。

信頼度を上げるほど、どちらのモデルでも必要面積が増える。欠陥が固まっているほど、同じ信頼度に要る面積が増えます。

クラスタリングは歩留まりの数字を甘く見せる一方で、試験計画のコストを重くします。働く向きは両方です。

混合分布まで拡張されている

現実の故障は、機構が 1 つのこともあれば複数のこともあります。外因性の欠陥による早期故障と、真性の摩耗故障が混ざる。ゲート誘電体スタックの破壊統計を、パーコレーションと進行性破壊の両方を含めてモデル化した 2010 年の検討4が、この種の重ね合わせを相手にしています。

そこで混合分布を使います。群Aと群Bの累積分布を割合 で混ぜる形で、負の二項と組み合わせると

という式になります。群ごとにクラスタリング係数も Weibull パラメータも別に持てる。

適用できない条件も書かれています。故障の母集団が統計的に独立から離れるとき、または が応力時間・面積・劣化状態で動くとき。機構どうしが相互作用する場合です。

Weibull を置き換える候補が出ている

TDCM(time-dependent clustering model)——非一様な誘電体破壊のための時間依存クラスタリングモデル5です。

で Weibull に戻ります。時間側にもクラスタリング係数を入れた形です。

同じ 2013 年の報告1は、BEOL の low-k 誘電体と FEOL のゲート誘電体の両方の実測データとよく一致することを示し、誘電体破壊の信頼性という分野で幅広く使えると位置づけています。

Weibull が正しいのは一様な理想膜に限られるので、先端ノードで普通に出てくる非一様な誘電体破壊が相手なら、TDCM が Weibull を置き換えうる。

Weibull で書かれた既存の解析は、「一様な膜という前提つき」だと読み直す必要があります。

は、当てはめて求める数より膜厚で決まる量

ここまで を「分布から読み取る傾き」として使ってきました。その 自体が、どこから来るのかを追えます。ゲート酸化膜の破壊をパーコレーションで計算した 1999 年の論文6が、その導出の出どころです。これが分かると、1.48 と 1.75 のずれを「どちらが正しいか」より「その差が何を測っているか」として扱えるようになります。

酸化膜を、一辺 の立方体の格子に切ります。面積 、厚さ の膜は、こう数え直せます。

本の柱が立ち、各柱は 個のセルを縦に積んだものになります。破壊は、1本の柱のセルが上から下まで全部欠陥になったときに起きる——これがパーコレーションの言い方です。欠陥生成率を とすると1個のセルが欠陥になる確率は なので、素子が生き残る確率は

これを上の TDCM と組み合わせて展開すると、傾きが膜厚で書けます。

は、自由に動かせるパラメータではありませんでした。膜を何枚のセルで貫くか()と、欠陥がどれだけ固まっているか()の2つで決まる。、つまり一様なら指数が 1 になって 、傾きがそのままセル数になります。パーコレーションで破壊統計を計算した論文6は、この考え方で酸化膜破壊の統計と膜厚依存性を定量的に再現できることを示しています。その膜厚依存性から、実効的な欠陥の「大きさ」として約 3 nmという値を引き出している。

図 03
A. 膜を一辺 a0 のセルに切り直す 縦は nBD = TOX / a0 個のセル 柱の本数 NC = AOX / a0² 1 本の柱が上から下まで全部欠陥になったとき破壊。 臨界欠陥サイズは約 1 nm なので a0 ≈ 1 nm。 B. 傾き β は膜厚とクラスタリングで決まる β = (TOX / a0) の (1 − 1/φ) 乗 φ → ∞(一様)なら指数は 1。 β = TOX / a0、膜を貫くセル数そのもの。 φ が有限なら指数は 1 未満。傾きは寝る。 ずれを逆に解くと φ が出る ln 1.48 / ln 1.75 = 0.3920 / 0.5596 = 0.7006 φ = 1 / (1 − 0.7006) = 3.3 a0 ≈ 1 nm なら TOX = a0 × 1.75 ≈ 1.8 nm 2 nm 未満。面積スケーリングが壊れる領域。 実測でも、Weibull の傾きは膜厚 2.1〜8 nm の範囲で厚さに比例する。 しかもその傾きは、面積スケーリングのべき則で抽出されたもの。 β は自由なパラメータより、セル数とクラスタリングの 2 つで決まっている。
膜を一辺 a0 の立方体に切り直すと、面積は柱の本数、厚さは柱あたりのセル数になり、破壊は 1 本の柱が上から下まで欠陥で埋まったときに起きる。だから傾き β は当てはめる自由なパラメータより、膜を貫くセル数とクラスタリング係数の 2 つで決まっている量になる。一様な極限では傾きがセル数そのものになるので、1.48 と 1.75 のずれは逆に解けて φ = 3.3。実効的な欠陥サイズ 3 nm を入れれば膜厚 5.3 nm が出ます。

ずれの大きさから、 が出る

ここが噛み合います。Poisson で抽出した傾きは、式のうえでは の側の値、つまり そのものです。いっぽう分布の当てはめから出る傾きは、 が有限な現実の 。上の式へ代入すると、2 つは独立な数よりべき乗でつながった 1 組になります。

ここから先はこの記事の読みですが、この関係は逆に解けます。1.48 と 1.75 を入れると

。「2 割のずれ」という言い方でぼやけていたものが、クラスタリング係数の値そのものになりました。3 つの点で筋が通っています。第一に符号。 が小さいほど欠陥の生成が局在して Weibull の傾きが寝るはずで、実際 1.48 は 1.75 より寝ています。第二に範囲。この式が物理的にも統計的にも整合するのは の側で、3.3 はその中にいます。第三に、 が Poisson から遠いこと。Poisson は ですから、3.3 は「ほぼ一様だが少し固まっている」より、別の分布と呼ぶべき距離です。負の二項へ置き換えろ、という前節の話が、ここで初めて数字の裏づけを持ちます。

ついでに膜厚も当たります。セルの一辺 を、パーコレーションの論文6が膜厚依存性から引き出した実効的な欠陥サイズ 約 3 nmと同じものと受け取れば、

5 nm 前後。同じ論文は、破壊に要る臨界欠陥密度が膜厚 5 nm あたりから急に下がり始め、3 nm を切ると一定になると書いています。この例は、その急降下の入口に座っていることになります。( をより小さく取る流儀もあり、 nm なら nm。どちらにせよ薄膜側です。この換算はこの記事の読みで、出典の値とは別です。)

この例の 2 割のずれには、出どころがありました。同じ論文が、膜厚が欠陥サイズと同程度まで薄くなると、モデルが特異な振る舞いを予測すると述べています。 が 1 前後へ張り付いていく崖の、すぐ手前です。

の推定は、故障数が小さいと楽観側へ傾く

換算の指数が である以上、 の推定精度が全部へ乗ります。極薄酸化膜の信頼性予測に対する Weibull 分布の非線形性の影響を追った 1999 年の検討7が相手にしているのが、まさにこの誤差の伝わり方です。

どれくらい散るのかは、計算で出ます。Weibull の最尤推定量の標準偏差は、故障数 に対して

で近似されます。真値 の母集団から 20 個ずつ取ると 、 で 1.63〜3.37。幅は中心の ±35% です。25 群を合成して 500 個にすれば 、 で 2.33〜2.67 まで締まる。(この計算はこの記事のもので、出典の値とは別です。)

怖いのは傾く向きです。故障数が小さいと、観測の窓に入るのは分布の上のほうのパーセンタイルだけになります。Weibull プロットは高パーセンタイル側の傾きが大きいので、そこだけで直線を引くと が大きい側へ出ます。

大きい側へ出た で 10 ppm のような低パーセンタイルへ外挿すると、寿命が実際より長く出ます。

楽観側へ傾く誤りです。安全側へ傾くなら気づけますが、こちらは黙って通ります。

この幅は前節のずれへ跳ね返ります。1.48 と 1.75 の差は 0.27。 で 、2 つの推定値の差の標準偏差はその 倍なので、差が を超えるには

故障数がおよそ 170 個。それより小さい試験で出した 2 つの の差は、クラスタリングへ翻訳する前に、推定の揺らぎの中へ収まってしまいます。「2 割のずれ」を へ翻訳する前に、その差が自分の で分離できる大きさかを当たってください。

2割のずれが、どこでいくらになるか

が指数に乗る、という事実の値打ちを出しておきます。同じ 2 割が、外挿の深さによって桁で働き方を変えます。低パーセンタイルへの外挿で Weibull の非線形性が何をするか7を、自分の数字で追ってみます。

面積換算のほう。上の関係式に、この実験の 1 倍と 100 倍を入れると、

同じ 100 倍の面積換算が、22.5 倍にも 13.9 倍にもなる。62% の開きです。 の 2 割が、換算係数の 6 割になっています。

確率の外挿のほう。ワイブルの低パーセンタイル寿命は ( が小さいとき)なので、同じ のもとで 2 通りの が与える寿命の比は

。ここへ外挿先の を入れるだけです。

外挿先 = 1.48 と 1.75 が与える寿命の比
10 ppm()3.3 倍
8.7 倍
17 倍

深く外挿するほど、同じ 2 割が大きく効きます。10 ppm で 3.3 倍なら安全率で吸える範囲にも入りますが、17 倍は設計判断が反転する幅です。

2 つの効果は掛け算で重なります。TEG から製品への面積換算と、そこから 10 ppm への確率外挿を、続けて 1 回ずつ通してみます。すべて TEG の に対する比で書くので、実数を入れずに済みます。

面積 100 倍で、尺度が縮む。 なので

そこから 10 ppm へ。 に ()を入れると

掛け合わせます。TEG の を 1 としたときの、製品の 10 ppm 寿命です。

5.4 倍。面積換算の 1.62 倍と、確率外挿の 3.31 倍が掛かった結果です。

図 04
A. 外挿を深くするほど、同じ 2 割が育つ 比 = p の −0.104 乗(1/1.75 − 1/1.48) 15101520 寿命比 3.3 倍(10 ppm) 8.7 倍 17 倍(2×10⁻¹²) 10⁻⁵10⁻⁹10⁻¹² 外挿先の確率 p B. 面積と確率は掛け算で重なる 面積 100 倍 1.62 倍 22.5 対 13.9 × 10 ppm へ外挿 3.31 倍 確率の外挿 製品の 10 ppm 寿命は 5.4 倍ちがう 楽観側の 1.75 は、破れている前提 (Poisson の面積スケーリング)から出た値。 保守側の 1.48 を選ぶ一手でも足りる保証は無い。 2 つがずれた時点で、どちらも前提が崩れている。 100 倍の面積換算だけでも 62% の開き。
同じ 2 割のずれでも、外挿を深くするほど値打ちが動く。10 ppm では 3.3 倍、10 のマイナス 9 乗で 8.7 倍、2×10⁻¹² では 17 倍で、最後のひとつは設計判断が反転する幅。しかも面積換算の 1.62 倍と確率外挿の 3.31 倍は掛け算で重なるので、TEG から製品の 10 ppm 寿命まで通すと 5.4 倍になり、その楽観側を出しているのは破れていると分かっている前提のほうです。

悪いのは、この 5.4 倍の向きです。楽観側にいる は、Poisson の面積スケーリングから逆算した値、つまり破れていると分かっている前提の側から出た数字です。破れている前提が、楽観側の答えを出している。保守側の 1.48 を選ぶ一手でも不足する側に落ちます——2 つがずれた時点で、どちらも前提が崩れています。

という数字は、どこから来るか

上の表の最下段には、出どころがあります。先端ロジックが要求している水準です。EUV の確率的スケーリングの指標をまとめた検討8が相手にしているのも、この深さの確率です。

1,500 億トランジスタ級のプロセッサを仮定します(この寸法はこちらの仮定です)。トランジスタあたりコンタクトが 3 個なら、このダイを歩留まらせるのに要るコンタクト故障率は を十分に下回る値になります。

割り算 1 回で出ます。

歩留まりモデルが解像することになる確率が、 台にあります。その水準では、 の 2 割のずれが 17 倍の寿命差になる。20 個の故障で の幅が中心の ±35% に開く、という上の計算が、この深さの外挿の手前に立ちはだかります。 を故障ゼロで実証するのに要る試行数は で、チップ単位で数えるかぎり実証できません。数える単位を下げる話と、 の精度の話は、同じ外挿の両端にいます。

面積で壊れるモデルは、寸法でも壊れる

もう 1 つ、別の壊れ方があります。同じ「小さいもので測って大きいものへ運ぶ」でも、運ぶ軸が面積より寸法のときです。EUV リソグラフィの確率的なパターニング不良の崖が何に依存するかを調べた 2020 年の論文9が、そちらの軸を相手にしています。

従来型の欠陥と確率的欠陥は、寸法への乗り方が別です。

従来型の欠陥は欠陥サイズのべき乗で乗ります。だから歩留まりの寸法依存は、EUV リソの確率的欠陥による指数関数的な変化よりも緩やかです。

べき乗と指数関数。

確率的欠陥のほうは、「トレンチやコンタクトがある閾値より小さくなると、ブリッジや閉塞コンタクトがおおよそ指数関数的に増える」。半対数プロットで直線になる、とも書かれています。

帰結が実務的です。「臨界寸法のごく小さな変化が、確率的欠陥の水準に非常に大きな影響を与える。」

ここが、この記事の主題と正確に対になります。

  • 面積の軸:Poisson の面積スケーリングが、欠陥のクラスタリングで壊れる( を入れて直す)
  • 寸法の軸:べき乗のスケーリングが、確率的欠陥の指数依存で壊れる(直す式が別に要る)

古典的な欠陥密度モデルは 2 つの軸に沿って外挿しますが、両方とも壊れています。理由は別々です。

2 つのモデルは、同じプロットの別の領域で有効です。寸法を小さくしていくと閉塞が増え、大きくしていくと結合が増える。この 2 つの「崖」のあいだに窓があります。窓の中で出た欠陥は、レジストの確率性以外に原因がある。つまり窓の中がクラスタ欠陥のモデルの持ち場で、崖の上は指数のモデルの持ち場です。

図 05
A. 崖が 2 つ。あいだが窓 閉塞コンタクト ブリッジ・結合 窓 欠陥数(対数) 臨界寸法 CD 半対数で直線になる=指数関数的に増える。 窓の中で出た欠陥は、レジストの確率性以外に原因がある。 窓の中がクラスタ欠陥のモデルの持ち場。 B. 2 つの軸は、別々の理由で壊れる 面積の軸 Poisson の面積スケーリング 欠陥のクラスタリングで壊れる 直し方:φ を入れる(負の二項) 寸法の軸 べき乗のスケーリング 確率的欠陥の指数依存で壊れる 直し方:別の式が要る 従来型の欠陥は欠陥サイズのべき乗。 確率的欠陥は指数関数。だから寸法依存が急。 崖に近い寸法では、φ を入れた外挿も的を外す。 まず自分がどちらの領域にいるかを当てる。
寸法を小さくすれば閉塞が、大きくすれば結合が、どちらもおおよそ指数関数的に増えるので、半対数プロットには 2 つの崖とそのあいだの窓ができる。窓の中で出た欠陥はレジストの確率性以外に原因があり、そこがクラスタ欠陥のモデルの持ち場、崖の上が指数のモデルの持ち場。面積の軸はクラスタリングで、寸法の軸は確率的欠陥の指数依存で、別々の理由で壊れているので直し方も別々になります。

テスト構造と製品で寸法がずれるなら、面積換算を直す一手は道半ばです。崖に近い寸法では、 を入れた外挿も的を外します。まず自分がどちらの領域にいるかを当ててください。

実務での使い方

面積換算の指数へ、分布の当てはめから出した をそのまま入れるのは避けてください。2 割ずれます。面積を振った実測で確かめることになります。

その2割を、捨てずに へ換算してください。 を逆に解けば、ずれそのものがクラスタリング係数の推定値になります。この例では 。2つの を持っているチームは、 も既に持っています。

面積項は、外挿の鎖の 1 本です。温度と電界の加速項と掛け算で並ぶので、面積項の誤差はそのまま全体の誤差になります。 試験に面積換算が省けるのは が大きいからで、試験の種類のほうは無関係です。V-ramp と TDDB の統計的な対応づけを追った 2012 年の検討10が、この 2 つの試験を橋渡しします。

必要試験面積は、クラスタリング係数を入れて計算してください。Poisson の式が返す面積は、実際に要る量より小さく出ます。

故障数が小さい 推定は、寿命を長い側へ誤ります。20 個で ±35%、500 個で ±7% という桁感です。

Weibull で書かれた過去の解析は、膜が一様という前提の上に立っています。先端ノードでは TDCM への置き換えが検討対象になります。

の 2 割は、外挿の深さで値打ちが変わります。100 倍の面積換算で 62%、10 ppm で 3.3 倍、 で 17 倍。どこまで外挿するかを決めてから、 に何桁の精度が要るかを当ててください。

テスト構造と製品で寸法がずれるなら、面積換算を直す一手は道半ばです。面積の軸はクラスタリングで、寸法の軸は確率的欠陥の指数依存で壊れています。別々の直し方が要ります。

この記事が示したのは、「TEG の測定を製品へ運ぶ式が壊れている」ことでした。式を直しても、まだ 1 つ宿題が付きます。運んでいる測定そのものが、製品を代表しているかどうかです。スクライブラインの TEG は、製品を観測する窓であると同時に、そのレイアウト次第では隣のダイの欠陥源でもあります。面積換算へ を入れる作業と、TEG のレイアウトを直す作業は別々の仕事ですが、どちらも「小さいもので測って大きいものを言う」という同じ操作に付いてくる代金です。

出典

  1. 1 Wu・Li・Stathis, Modeling of time-dependent non-uniform dielectric breakdown using a clustering statistical approach (2013) doi:10.1063/1.4824035
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