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アドバンテスト排出の大半は顧客の使用電力|APOSの節電はまず顧客の電気代に

AdvantestのFY2024の温室効果ガス排出は、サステナビリティレポート2025のデータ1から計算すると約380万トンで、その約3分の2にあたる約254万トンがScope 3のCategory 11だった。Category 11とは、販売した製品を顧客が使うときの電力消費に伴う排出を指し、同社はFY2024に売ったテスタが10年間に使う電力の見込みとして算定する。自社の工場とオフィスの排出(Scope 1+2)は0.2%にすぎない。同社の集計では、排出の大半が、顧客の工場で使われるテスタの分として算定される。

しかし同社はCategory 11を、実際の電力量ではなく、その年度に売ったテスタの台数と仕様上の稼働電力から算定している。2025年9月に出したAPOSは2、すでに顧客の工場で動いているV93000の待機カードを止めるソフトだ。この算定式から見ると、APOSの節電はAdvantestのCategory 11の数字を動かさず、まず顧客の電力量と電気代に表れる。Advantestが発表で掲げた効果も、顧客の運用コストの削減とサステナビリティ目標の達成だった。

APOSは、V93000の待機カードをテストの場面に応じて止める

Section titled “APOSは、V93000の待機カードをテストの場面に応じて止める”

APOSは、AdvantestのSoCテスタV93000向けのソフトだ。公式発表によれば2、実際のテスタの使用状況に基づいて、選択したテストカードを自動で有効化・無効化し、不要な電力消費を減らす。V93000は、デジタル、RF、アナログ、電源などのカードを組み合わせて使うテスタで、製品ページによれば3、すべてのカードがすべてのテストヘッドに適合する。本記事では、あるテストの場面で使わないカードが電源の入ったまま待機している状態を、APOSが減らす不要な電力消費と読む。

図1常時通電とAPOSの状態制御
常時通電のまま APOSで状態制御 V93000のテストヘッド V93000のテストヘッド 必要 待機 消費電力に待機分が混ざる 必要 待機・無効化 状態・電力 APOS TCSの履歴
APOSが止めるのはテスタ全体ではなく、その場面で測定に使わない待機カードだ。止めたカードの状態と電力はTCSの履歴に残る。

テスタ全体の電源を落とすと、測定に使うカードまで止まる。APOSは、測定に要るカードを通電したまま、待機カードだけを無効化する。どのカードをどの単位で止め、どんなカードを止められるかは、APOSのカード単位の電源制御で詳しく扱う。

図2待機カードの電力をどこで分けるか
測定に必要 待機 全カードを 常時通電のまま テスタ全体を 一括停止 APOSが選択カードを 自動で有効化・無効化 待機カードの電力が 測定と無関係に積み上がる 必要カードまで止まり 測定に影響 待機カードだけ無効化し 状態を記録 必要で通電 待機で通電 止まった必要カード 無効化した待機カード
全カードを通電したままだと待機電力が積み上がる。2段目は比較のために置いた、テスタ全体を止める場合で、測定まで止まる。APOSは待機カードだけを無効化する。

止めた結果は、テストセルとテストフロアの2段で見える。APOS Client Displayは、電力の使用状況と、カードの種類、稼働状態、使用数をリアルタイムで表示する。APOSのダッシュボードは、Testcell Central System(TCS)のウェブダッシュボードと連携し、テストフロア全体の省電力データを一元管理して、履歴をレポートと改善に使う。量産工場向けソリューションのページは4、APOSを、テストセルのデータ収集やレシピ管理を担うSmart TestCellの仕組みを広げる製品として並べている。

図3テストセルとテストフロア
テストフロア単位 APOS Dashboard TCS Server Web Dashboard 電力削減データを中央管理 履歴記録 レポート・改善 テストセル単位 V93000 APOS Client Display リアルタイム表示 有効化・無効化 種類・状態 数量・電力 APOS APOS 他のテストセル 有効化したカード 無効化したカード
カードの切り替えとリアルタイム表示はテストセルごとに行い、省電力データはテストフロア単位でTCSのダッシュボードに集めて履歴に残す。配置は、発表が挙げる3つの機能を本記事で並べたもの。

販売分の使用時排出の算定値は、FY2024に前年の約1.7倍になった

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Advantestの環境ページは5、FY2024の排出比率を円グラフで示し、Category 11を61%、購入した製品・サービス(Category 1)を35%としている。ところが、同じページの棒グラフとサステナビリティレポートのデータ表でFY2024の値を見ると、Category 11は2,538千トン、Category 1は1,190千トン、Scope 1+2を含む総排出は3,802千トンだ。ここから計算するとCategory 11は約67%、Category 1は約31%になる。61%と35%は、FY2023の値(Category 11が1,520千トン、総排出が2,490千トン)から計算した比率と一致する。

どちらの年でも、販売製品の使用が算定上の排出の6割以上を占める。しかもCategory 11の算定値は、FY2018の1,175千トンからFY2023の1,520千トンへ増え、FY2024には前年の約1.7倍の2,538千トンになった。一方でScope 1+2は、国内拠点の電力をほぼすべて再生可能エネルギーに切り替え、FY2024には韓国の拠点でも導入を始めたことで、FY2024にFY2018比76%減の約9千トンまで下がった。自社の工場をいくら省エネにしても、全体の排出はほとんど動かない。

次の節で見るとおり、同社の算定は売った台数に比例するので、テスタが売れるほどCategory 11は増える。本記事では、FY2024の増加もこの式によるものと読む。

Advantestの算定式は、売った台数と仕様上の電力で決まる

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サステナビリティレポート2025によれば、Category 11は次の積で算定する。

販売台数 × 稼働時の消費電力 × 年間稼働時間 × 使用年数 × CO2排出係数

対象はSoCテスタとメモリーテスタで、使用年数は10年と置く。消費電力は、対象のシステムの製品仕様から計算した値を使い、排出係数は国際エネルギー機関(IEA)の世界平均の値を使う。つまり、ある年度に売ったテスタが10年間に使うと見込む電力の排出を、売った年度にまとめて計上する。

この式に入るのは、台数、仕様上の電力、稼働時間、年数、係数だけだ。顧客の工場でAPOSが待機カードを止めても、式の入力は変わらない。APOSが動くのは顧客の工場にあるV93000で、過去の年度に売った分は、売った年度のCategory 11に計上済みだ。V93000は2023年に累計1万台目6を出荷し、1999年に最初に納めた1台は2024年の時点でイタリアの顧客の工場でまだ使われている7。

Advantest自身も、この算定方法を課題としている。環境ページは、Category 11について、売った台数に比例して増える算定方法から離れることを課題に挙げ、顧客の再生可能エネルギーの導入を反映する算定方法を検討するとしている。同社はFY2030に向けたScope 3の削減目標を見直し中で、事業の実態に合い、投資家に分かりやすいScope 3の指標を作るとも書いている。

算定式の中で同社が自分で動かせるのは、新しい製品の仕様上の電力だ。Advantestは、半導体テスタの新製品について、従来の製品より消費電力を20%以上減らすことを、環境に配慮した製品の基準にしている。行動計画のKPIは、Category 11の排出を、同社が「AT innovation」と呼ぶテスタの能力の指標(トランジスタ数、ピン数、周波数、電源電流など)で割った値だ。FY2021〜2023の平均に対してFY2024〜2026の平均で86%減らす目標を置き、FY2024は84%減まで進んだ。

APOSの節電は、顧客の電力量と電気代に表れる

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前節の算定式から見ると、APOSの節電は、それを使う顧客の電力量に表れる。テスタを動かすファウンドリやOSATにとって、テスタの電力は自社で買う電気で、自社の排出(Scope 2)と電気代に直接入る。APOSの製品ページ8が掲げる効果も、電気料金と炭素コストの削減、サプライチェーンのサステナビリティ目標の達成、規制への対応だ。

英語版の発表では9、ASEの副社長Jordan Lin氏が、APOSのリアルタイムの電力監視と自動化によってテストフロア全体のエネルギーの無駄を大きく減らしたと述べている。APOSを開発したのはAdvantestの量産サービスの部門で、同社の担当者は、顧客が社内の電力管理の仕組みで得られるより効果的に不要な電力を減らせると説明した。発表の時点で、APOSは複数の顧客のV93000にすでに導入されていた。

サステナビリティレポートは、AIやHPC向けのテスト需要の伸びを気候変動の機会に挙げ、その対応策として、テスト性能を上げながら電力を最適化した製品を出すことを挙げる。同社は、テスト1回あたりの排出を競合より低くできれば、脱炭素の流れは機会になると書く。顧客と協力してCategory 11を減らす作業部会も置いている。本記事の読みでは、APOSは、顧客の工場にある既存のV93000でテスト1回あたりの電力を下げる手段として、この競争に当たる。

本記事の読みでは、APOSのような運用側の節電がAdvantestの排出の数字に入るかは、同社が作るScope 3の新しい指標の算定方法で決まる。導入する側が節電量をどう見積もるかは、APOSの節電量の見積もり方にまとめた。テスタが工程のどこで何を測るかはテストと選別、同社の事業はアドバンテストの企業研究にある。

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