APOSの節電見積もり、4項の掛け算1枚の削減電力だけ実測、本記事の式
AdvantestがAPOSの効果として示しているのは、導入した顧客の発言と定性的な記述だ。英語版の発表では1、ASEの副社長Jordan Lin氏が、APOSのリアルタイムの電力監視と自動化によってテストフロア全体のエネルギーの無駄を大きく減らしたと述べ、Advantestは、複数の顧客のV93000に導入済みで、テストコストの削減に良好な成果が出たと書く。自社のフロアでどれだけ減るかは、本記事の整理では、テスタ台数、待機カードの枚数、1枚あたりの削減電力、待機の時間の掛け算で見積もる。
本記事の整理では、このうち3つの項は、導入前でもテストプログラムと運用の記録から数えられる。しかし、1枚あたりの削減電力は、カードを止めたときと止めないときの電力の差で、測って埋める項になる。物差しになるのは、APOSとは別の文書であるAdvantestの2013年の特許だ2。この特許は、使わないテスタのサブユニットのうち、止めても校正なしで精度の仕様内に戻るものだけを無効化し、戻らないものは電力を絞ったまま動かし続ける方式を書いている。
見積もりの式は、Advantestの排出算定と同じ掛け算で組める
Section titled “見積もりの式は、Advantestの排出算定と同じ掛け算で組める”待機カードとは、テスタの電源が入っている間、その場面の測定に使われないカードを指す。APOSの製品ページは3、APOSをV93000の電源が入っている間の電力管理を最適化するソフトと説明し、公式発表によれば4、APOSは選択したテストカードを使用状況に応じて自動で有効化・無効化する。節電量は、止めたカードの数と、止めていた時間の積で決まる。
Advantest自身も、テスタの使用時の排出を掛け算で算定している。サステナビリティレポート2025によれば5、販売製品の使用による排出(Scope 3 Category 11)は、販売台数、製品仕様から計算した稼働時の消費電力、年間稼働時間、使用年数10年、排出係数の積だ。式は、テスタ1台の稼働時の電力を、製品仕様から計算した値で置く。この算定とAPOSの関係は、APOSとAdvantestのScope 3で扱った。
本記事の想定では、テスタ台数はテストフロアの設備の記録から、待機カードの枚数はテストプログラムから数える。V93000はデジタル、RF、アナログ、電源の機能をカードで組み合わせるテスタで、製品ページによれば6、すべてのカードがすべてのテストヘッドに適合する。どのカードがどの場面で働くかは、テストプログラムに書かれている。導入後は、APOS Client Displayが、電力の使用状況と、カードの種類、稼働状態、使用数をリアルタイムで表示する。APOSのダッシュボードはTestcell Central System(TCS)と連携し、テストフロア全体の省電力データを履歴として残す。
1枚あたりの削減電力は、止めたときと止めないときの電力の差だ
Section titled “1枚あたりの削減電力は、止めたときと止めないときの電力の差だ”1枚あたりの削減電力は、待機していたときの電力と、止めた後の電力の差だ。APOSの発表は、選択したテストカードを無効化すると書く。
APOSとは別の文書だが、Advantestの特許が書く方式では、止めた後の状態は2種類ある。電源を切って電流を流さない状態と、電力を絞って仕様内に保つ状態だ。止めても校正なしで仕様内に戻るサブユニットは前者に、戻らないサブユニットは後者に置く。特許はまた、どの状態に置くかをサブユニットの種類に応じて変えると書く。この方式を物差しにすると、1枚の削減電力はカードの種類ごとに測るのが筋だ、と本記事は読む。特許の方式の詳しい分岐は、APOSのカード単位の電源制御にまとめた。
特許の方式では、戻すときにも時間の制約がある。特許の制御部は、必要なサブユニットが仕様内に戻るまでテストプログラムの開始を待たせ、待ち時間を避けるために、戻るまで時間のかかるサブユニットを使う前に早めに有効化する。この方式を当てはめると、戻すのに時間がかかるものほど、待機の時間のうち止めていられる部分は短くなる。
待機の時間は、テストの最中にも、テスタが止まっている間にも生じる
Section titled “待機の時間は、テストの最中にも、テスタが止まっている間にも生じる”待機の時間は、テスト中の場面の切り替わりだけで生まれるわけではない。APOSの製品ページは、制御の対象をV93000の電源が入っている間とする。Advantestの特許も、テスタが動いている間と待機している間の両方で消費電力を下げる仕組みを書き、すべての資源を低い活動状態に置く待機用の設定も挙げている。見積もりの時間には、テストプログラムの各場面の長さと、テスタの電源が入ったまま測定していない時間の両方を入れる。テスタが工程のどこで何を測るかは、テストと選別にまとめている。
テスタの電力が減ると、熱を運び出す電力も変わる。Advantestの特許は、テスタの資源を常に動かしてきた結果、テスタの温度を保つ冷却の熱と、テストフロアの建物の空調と冷却設備の電力が増え続けたと書く。同じ特許は、冷却ポンプの強さを、動いている資源の数に応じて変える方式も挙げている。カードの節電に伴う空調や冷却の電力の変化は、カードの掛け算とは別に、工場の設備の記録で数えることになる。
導入の評価で先に数えられるのは、待機カードの枚数と時間だ
Section titled “導入の評価で先に数えられるのは、待機カードの枚数と時間だ”導入を評価する側が先に数えられるのは、テストプログラムから読める待機カードの枚数と時間、そしてテストフロアの記録にある台数と電源投入時間だ。残る1枚あたりの削減電力は、カードの種類ごとに、止めたときと止めないときの電力を測って埋める。この4つがそろえば、ASEの副社長が述べた削減を、自社のフロアのキロワット時に置き換えられる。
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- 1Advantest:APOSの発表とASEのコメント(英語版、2025年9月)advantest.com ↩
- 2Advantest:使わないテスタ資源を低活動状態に置く特許US10234498B2(2013年出願、2019年成立)patents.google.com ↩
- 3Advantest:APOSの製品ページ(2026年10月閲覧)advantest.com ↩
- 4Advantest:APOSの発表(2025年9月)advantest.com ↩
- 5Advantest:Category 11の算定式(サステナビリティレポート2025、2025年12月)advantest.com ↩
- 6Advantest:V93000 SoCテストシステムの製品ページ(2026年10月閲覧)advantest.com ↩