AIサーバー電源、SiCで損失約33%減ROHM試算、第5世代の三相LLC
ROHMは2025年10月の白書で、AIサーバー向けの800V DC給電を想定し、電源ラックに置く33 kWの三相LLC変換器を周囲温度100°Cで計算した。その試算では、第5世代SiC MOSFETの合計損失(導通損失とスイッチング損失の和)が第4世代より約33%少ない1。白書はこの試算の前に、規格化オン抵抗の約30%低下と、ゲートに掛けられる負電圧を広げてターンオフを速めたことを並べて書く。筆者はこの並びから、第5世代がこの回路で減らすのは導通損失だけではなく、ターンオフの損失も含むと読む。
同じ白書でROHMは、社内の分析から、電源ラックのAC-DCにSiC、ITラックのDC-DCにGaNを使う構成が最適だとした1。白書の説明では、SiCは低い抵抗と大きな電流で効率を取り、GaNは高い周波数で変換器を小さくする。白書が第5世代の効果を試算したのも、電源ラックの三相LLCだ。
ROHMの白書は、電源ラックにSiC、ITラックの高周波段には将来案としてGaNを置く
Section titled “ROHMの白書は、電源ラックにSiC、ITラックの高周波段には将来案としてGaNを置く”800V DC給電では、交流を直流に変える段をITラックの外へ出し、隣の電源ラックにまとめる。電源ラックは三相400Vの交流を800Vの直流に変え、ITラックはその800Vを受けて50Vへ降ろす。白書は、電源ラックでは効率、ITラックの中では基板面積を空けるための電力密度が最も大事だと書く。
素子の使い分けについて、白書はこう説明する。SiCはディスクリートでも抵抗が低く大きな電流を流せるので、大電力の段に向く。GaN HEMTはSiCよりゲート電荷(Qg)と出力電荷(Qoss)が大幅に小さく、速く切り替えても損失が少ないので、周辺部品を小さくできる。
電源ラックのLLCでは、ターンオフの損失が素子の損失の約6割を占める
Section titled “電源ラックのLLCでは、ターンオフの損失が素子の損失の約6割を占める”電源ラックの後段は、三相の絶縁型LLC変換器だ。LLCは共振を使って、ターンオンをゼロ電圧スイッチング(ZVS)にし、ターンオンの損失をなくす。それでも一次側の素子は、ターンオフでは電圧と電流が重なった状態で切る。白書は、第4世代の1200V品で組んだ33 kWのLLCを計算し、効率約99.5%のうち、ターンオフの損失が、計算した素子の損失の約60%を占める1と示した。
この試算は、トランスの励磁インダクタンスを大きく取って効率を優先した条件だ。白書自身も、この設定は一次側の導通損失とターンオフ損失を減らす一方で、負荷の急な変化への応答と入力電圧の変動への追従が悪くなると注意している。
第5世代の約33%には、オン抵抗と速いターンオフの両方が効いていると読める
Section titled “第5世代の約33%には、オン抵抗と速いターンオフの両方が効いていると読める”第5世代は、同じ耐圧・同じチップサイズの第4世代に比べて、Tj=175°Cのオン抵抗が約30%低い。この数字の条件はROHM第5世代SiCの「約30%減」はTj=175°Cで比べたオン抵抗で扱った。白書は続けて、ゲートの負電圧の定格を広げ、-5 Vでの駆動(直流の定格は-7 V)に対応した1ことを書き、速いターンオフでさらに損失が減るとする。
そのあとに、周囲温度100°Cの33 kWのLLCで合計損失が約33%減るという試算が続く。条件の違う図の値を並べた筆者の概算では、第4世代の内訳(周囲温度の記載がない図)でターンオフ以外の約4割の素子損失がすべて3割減っても、合計は1割強しか減らない。この概算からは、33%にはターンオフの損失の減少も入っていると読める。
ROHMの設計見積もりでは、ITラックのGaN案はSiC案の約1.9倍の電力密度になる
Section titled “ROHMの設計見積もりでは、ITラックのGaN案はSiC案の約1.9倍の電力密度になる”ITラックでは、800Vを50Vへ降ろす三相LLCが基板の上に載る。白書の計算では、1200V SiC MOSFETの一次側で組んだ場合、10 kW出力の効率はスイッチング周波数125 kHz以下で99%を超え1、周波数を上げると下がる。100 kHzで動かす20 kWの設計は、40×91×700 mmで電力密度7.8 W/ccだ。
白書が将来の案として示すのは、一次側に650V GaN HEMTのGNP2025TDを使うカスケード構成の三相LLCだ。一次側とトランスに流れる電流が半分になり、500 kHzまで効率99%を保つ。20 kWの設計は40×55×605 mmで、電力密度は15 W/ccになる。2つの設計見積もりの電力密度を筆者が割ると、GaN案はSiC案の約1.9倍だ。2つは周波数も回路構成も違う設計で、GaN側は白書の将来の案だ。
Vienna整流器の双方向スイッチは、ROHMとRenesasの白書で提案する素子が違う
Section titled “Vienna整流器の双方向スイッチは、ROHMとRenesasの白書で提案する素子が違う”電源ラックの前段は、三相交流を800Vの直流にするVienna整流器だ。ここには、正負どちらの電圧も止める双方向スイッチが要る。ROHMの白書は、650V以上の素子を2個逆向きに直列につなぐ方式1を前提に、導通抵抗が2倍になるので低いオン抵抗が要るとして、自社の750V SiC MOSFETを推す。2個のSiC MOSFETをソース共通で1つにまとめたDOT-247パッケージも用意し、Vienna整流器の計算では50 kWまで効率99%超という試算を示した。
Renesasは同じ2025年10月の白書で、この位置に双方向GaNスイッチ1個を置き、普通のトランジスタ2個を置き換える2構成を示した。Renesasの白書は、サイドカーラックのAC-DCの1ブロックを約20 kW以上としている。2社の白書の提案を並べると、Vienna整流器の双方向スイッチに、ROHMはSiC MOSFET 2個の直列を、Renesasは双方向GaN 1個を充てている。想定する電力も、ROHMの試算の33〜50 kWとRenesasの約20 kW以上で違う。Renesasが白書でGaNを置く位置はサイドカーの整流器とラック内の16:1変換の2か所で、48Vの中間母線を残す構成をとる。
採用が先に出たのは、第4世代の750V品
Section titled “採用が先に出たのは、第4世代の750V品”ROHMのAIサーバー向けの採用例で先に公表されたのは、第4世代の品だ。2026年6月、ROHMは750V SiC MOSFETのSCT4013DLLが、AIサーバーの電池バックアップ装置(BBU)に採用された3と発表した。±400Vの給電構成の電源部に入り、最高接合温度は175°Cだ。ROHMは、800V DC構成でもBBUの電池パックに掛かる電圧は約560Vなので、750V品を使えると説明する。
ROHMは2026年5月の決算資料のSiC事業の項で、コンピュータ・ストレージ向け(AIサーバー電源向け)の売上が2026年度に前年の2.5倍になる4と見込んだ。ROHMは2026年5月の決算説明で8インチの第5世代の量産出荷開始を報告し、ディスクリートとモジュールのサンプル提供は4月の発表で2026年7月に始める計画とされた。
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- 4ROHM:2025年度決算説明資料、AIサーバー電源向けSiCの売上見通し(2026年5月)fscdn.rohm.com ↩