3社の裏面電源は着地先が違うIntelは18Aでnano-TSV、14AとTSMC A16は裏面直接コンタクト
IntelのPowerVia、TSMCのSuper Power Rail、SamsungのSF2ZのBSPDNは、どれも電源を前面の配線層から抜き、空いた配線トラックを信号に充てるための技術だ。違いは裏面の導体の着地先に出る。Intelの18Aは前面で先に埋めたnano-TSVへ、TSMCのA16はソース・ドレインへ直接着地させ、Intelは次の14Aで直接コンタクトへ移ると発表した。これらのノードの着地先は、imecが試作したBuried Power Rail(BPR)とは別の場所にある。
裏面電源だけを入れ替えて比べた利得は、Intelで周波数6%、Samsungで性能7.5%だ。IntelのPowerViaは、裏面電源のない同等の設計に比べて周波数を6%上げ1、Samsungの第1世代BSPDNは前面給電に比べて性能を7.5%上げた2。IEEE Spectrumは、Intelの6%を世代を1つ進めたときの通常の利得の約半分3にあたると書いている。TSMCのA16の同じ電力で8〜10%速い4という値はN2Pとのノード比較で、改良したナノシートトランジスタの効果も含む。
3社とも、前面の配線トラックを信号に充てるために電源を裏へ移す
Section titled “3社とも、前面の配線トラックを信号に充てるために電源を裏へ移す”標準セルの上端と下端には電源と接地のレールが通り、従来は前面の最下層の配線で信号と場所を分け合ってきた。セルの高さを縮めるほど、この取り合いが配線の混雑とIR dropを生む。BPRはレールをトランジスタの下へ埋めて場所を空ける技術で、3社の裏面電源は、電源網そのものをウェーハの裏へ移して前面を信号に充てる。
3社は同じ言葉でこの目的を書いている。IntelはPowerViaの論文で、前面に信号配線のための配線資源を追加できる1と書き、2026年の論文では裏面電源が信号配線と電源供給を切り離し、配線を微細化する費用と複雑さを減らすとしている5。TSMCはA16が前面の配線資源を信号に充てて論理密度と性能を上げる6と発表し、SamsungはSF2ZのBSPDNを電源レールをウェーハの裏に置き、電源線と信号線の間のボトルネックをなくす技術7と呼ぶ。
前面が空くと、最も細かい配線層を緩められる。IEEE Spectrumの取材によれば、Intelは電源線がなくなった最下層M0の配線間隔を6 nm広げられ、EUV露光の手間を減らせるとみる3。Intelの技術開発担当副社長Ben Sellは、配線を緩めた分の節約が裏面工程の追加費用を上回る3と述べた。
裏面電源だけの利得は、Intelで周波数6%、Samsungで性能7.5%
Section titled “裏面電源だけの利得は、Intelで周波数6%、Samsungで性能7.5%”| 会社と出典 | 比べた相手 | 面積・セル利用率 | 電圧降下 | 周波数・電力 |
|---|---|---|---|---|
| Intel、VLSI 2023(Intel 4のEコア) | 裏面電源のない同等の設計 | セル利用率90%超 | 30%以上改善 | 周波数6%向上 |
| Intel、VLSI 2026 | 同等の前面配線 | 配線後の面積11%減 | 動的な電圧降下を10分の1 | 周波数5〜6%向上、または動的電力15%超減 |
| Samsung、VLSI 2024(第1世代BSPDN) | 前面給電 | ― | ― | 性能7.5%向上、または電力5%減 |
| TSMC、VLSI 2026(A16) | N2P(ノード比較) | チップ密度8〜10%向上 | ― | 速度8〜10%向上、または電力15〜20%減 |
Intelの2つの値は、同じ方式を2世代で測ったものだ。2023年の試作では、Intel 4のFinFETで作ったEコアがセル利用率90%超で、電圧降下を30%以上改善し、周波数を6%上げた1。2026年の論文では、裏面電源が配線後の面積を11%減らし、動的な電圧降下を10分の1にし、周波数を5〜6%上げるか動的電力を15%超減らす5。Intelは18Aの製品ページで、PowerViaの最悪時の電圧降下が最大10分の1、配線後のブロック面積が最大11%小さくなる根拠としてこの論文を挙げている。電圧降下の大きな改善を数字で示したのは、3社のうちIntelだ。
Samsungの研究所は、2nm以降のGAAトランジスタで作った標準セルで、第1世代BSPDNの効果を試作チップで確かめた。金属配線の最適化で速度を6%上げ、前面給電に比べて性能7.5%か電力5%の利得を得た2と報告している。
TSMCの論文の題は、A16を改良したナノシートトランジスタとSuper Power Railを持つ技術としている4。表の値はこの両方を合わせたN2Pとの差で、裏面電源だけの利得とは分けて読む必要がある。TSMCは同じ論文で、A16の認定を終え、2026年第4四半期に量産すると報告した。
Intel 18Aはnano-TSV、Intel 14AとTSMC A16は裏面直接コンタクトに着地する
Section titled “Intel 18Aはnano-TSV、Intel 14AとTSMC A16は裏面直接コンタクトに着地する”Intelは、PowerViaを公表されたBPR方式より電源をトランジスタへ直接届ける構成1と位置づけた。Intelの18Aの製品ページによれば、PowerViaはすべての標準セルにnano-TSVを埋め込み、太いピッチの配線とバンプをダイの裏へ移す8。nano-TSVはトランジスタを作る段階で前面から掘って金属で埋め3、配線層を作って裏返した後、その端が出るまで元のウェーハを削る。BPRを先に埋め、薄化した後に裏から穴を当てるimecの方式とは、穴を掘る面と順番が逆になる。
A16のSuper Power Railは、裏面直接コンタクト方式で、N2Pのゲート密度とNanoFlexの設計上の利点を保つ4。imecの分類では、裏面直接コンタクトは裏からのビアをソース・ドレインの底に当てる方式で、BPRを使わない中工程の長いビア(TSVM)、BPR、直接コンタクトの順にセルは小さくなり、統合は難しくなる9。
Intelも直接コンタクトへ進む。2025年4月、Intelは14Aに18AのPowerViaを発展させた直接コンタクト方式のPowerDirectを使う10と発表した。直接コンタクトは前面との位置合わせを厳しくし、その要求の差は表裏合わせの要求の記事で扱っている。
SamsungはSF2ZのBSPDNを2027年に量産すると発表した
Section titled “SamsungはSF2ZのBSPDNを2027年に量産すると発表した”Samsungは2024年6月、SF2ZにBSPDNを組み込み、SF2に比べてPPAを高め、IR dropを大きく下げ、2027年に量産する7と発表した。
研究の発表は、直接コンタクトの方向を示す。Samsungのファウンドリー事業部はVLSI 2026で、2nm世代のセルを5トラックまで縮めるとトランジスタに使える幅が限られ、性能の制約になる11と指摘し、裏面電源と裏面直接コンタクトを前提に、隣の列との境界の面積を借りるセル構造を提案した。セルの遅延は5〜9%減り、Armのコアで面積を増やさずに最大動作周波数が9.8%上がったという。この論文が示すのはセル構造の提案で、SF2Zの仕様ではない。
差が出るのは、直接コンタクトへ移る時期と、裏面電源を載せるノード
Section titled “差が出るのは、直接コンタクトへ移る時期と、裏面電源を載せるノード”imecの計算では、A14世代の5トラックの高密度ロジックで、直接コンタクトの最良型がBPR方式より8.9%速い9。TSMCのA16とSamsungの2026年の論文は、どちらも直接コンタクトを使う。Intelは18Aをnano-TSVで量産し、直接コンタクトは14Aから使う。
裏面電源を載せるノードの選び方も、IntelとTSMCで違う。IntelはPowerViaを18Aの中核技術に挙げ、18Aは米国で量産に入っている8。派生の18A-PTは、裏面電源を持つベースダイ8として3D積層に使う。TSMCは、A16を信号配線が複雑で電源網の密なAI・HPC製品に最も適するとした4。次の世代では、A14を2028年に量産し12、Super Power RailはA14の拡張版A12でAI・HPC向けに2029年に量産する13。SamsungはSF2Zの効果を、HPCの設計の性能向上7として打ち出している。
次に確かめるべきなのは、TSMCのA16が2026年第4四半期に予定どおり量産に入るか、Intelが14AのPowerDirectで直接コンタクトの数字をどう示すか、SamsungがSF2Zの着地先を技術論文で示すかの3点だ。CFETで電源レールがどこへ移るかはCFETのM0電源レールと裏面コンタクト、3方式の構造の違いは裏面電源の記事にまとめている。
13件を表示
- 1
- 2
- 3IEEE Spectrum:PowerViaの製造工程とM0の緩和(2023年6月)spectrum.ieee.org abcd
- 4
- 5
- 6TSMC:A16とSuper Power Railの発表(2024年4月)pr.tsmc.com ↩
- 7Samsung:SF2ZへのBSPDN導入、SFF 2024(2024年6月)news.samsung.com abc
- 8Intel 18AとPowerViaの製品ページ(2026年10月閲覧)intel.com abc
- 9imec:裏面接続方式のDTCO比較、VLSI 2023の成果(2023年8月)imec-int.com ab
- 10Intel:14AのPowerDirect、Direct Connect 2025(2025年4月)newsroom.intel.com ↩
- 11
- 12TSMC:A14の発表(2025年4月)pr.tsmc.com ↩
- 13TSMC:A13とSuper Power Rail付きA12の発表(2026年4月)pr.tsmc.com ↩