DISCOのレーザソー3機種、ブレードを補完避ける損傷ごとに機種が異なる
レーザソーとは、ダイヤモンドブレードの代わりにレーザ光でウェーハを加工するダイシング装置を指す。ストリート(チップ間の切り代)の表面に溝を掘るグルービング、ウェーハを切り離すフルカット、ウェーハ内部に改質層を作り、貼ったテープを引き伸ばして割るステルスダイシングの3通りに使う。DISCOは2025年12月、300mmウェーハ用のレーザソー3機種、DFL7162・DFL7363・DFL7563を発表した1。発表では、ブレードダイシングが1970年代から主流であり、レーザダイシングはLow-k膜を持つロジックやMEMSのような加工の難しいデバイスに向けた補完の手法として採用が増えていると説明している。
ブレードとレーザの分担は、DISCOのLow-kの手順に表れている。その手順では2、レーザソーがストリートに2本の溝を掘ってLow-k膜を含む配線層を取り除き、その後でウェーハを通常の速度でブレードダイシングする。この手順では、ブレードで剥がれやすい表層をレーザで除き、Si本体はブレードで切る。同社のレーザソーの累計出荷は2026年2月に4,000台を超えた3。2002年の発売から2020年までの18年間で2,000台、その後の6年間でさらに2,000台だ。DISCOはこの発表でも、レーザソーをLow-k膜を守るグルービングや極薄メモリのSDBG工程でブレード加工を補う手法とする。
レーザの当て方は、表面を除くアブレーションと内部を改質するステルスダイシングの2つ
Section titled “レーザの当て方は、表面を除くアブレーションと内部を改質するステルスダイシングの2つ”DISCOのレーザ加工の解説によると4、アブレーションは高エネルギーのレーザを表面に集め、材料を溶かして昇華させて取り除く。硬さに左右されないので、さまざまな材料を加工できる。接触しないので、チッピングやクラックも出にくい。一方で微細な加工くずが出る。加工くずは表面に付くと純水洗浄では取れず、ボンディング不良などの原因になる。そのため加工前に水溶性樹脂を塗り、加工後に樹脂ごと洗い流すのが一般的だ。DISCOはこの保護膜をHogoMax5として提供している。
ステルスダイシングは、ウェーハを透過する波長のレーザを内部に集めて改質層を作り、テープエキスパンドで個片化する。同じ解説によると、表裏面に傷が付かず、加工くずの発生も抑えられ、水を全く使わない。DISCOは、MEMSのように負荷に弱い対象に最適としている。DISCOのステルスダイシング対応機は、浜松ホトニクスがDISCO向けに開発したレーザと光学系のモジュール(SDエンジン)を組み込んでいる。
DFL7162はLow-k層を先に除き、Siの切断をブレードに渡す
Section titled “DFL7162はLow-k層を先に除き、Siの切断をブレードに渡す”Low-k膜は機械的強度が低く、通常のブレードダイシングでは膜が剥がれるおそれがある2。DISCOが示す手順では、既存機DFL7161がストリートにPi型かOmega型の2本の溝を掘り、その後でブレードが通常の速度で切る。DISCOは、この方法でスループットを保ちながら、チッピングや剥離を大きく減らすか無くせると説明する。7161は短パルスのUVレーザを使う。各パルスがLow-k材料に吸収されて材料が蒸発し、その蒸気が熱を持ち去るので、周囲への熱の伝わりが小さい。
DFL7162の発表にある機能は、2ロードポートと装置内レイアウトの見直しによる生産性向上、グルービングとフルカットに向けたさまざまな素材用の発振器と光学系、テープフレーム搬送とウェーハ搬送の両対応(オプション)だ。既存のDFL7161も6、Low-k溝やストリート上のTEGの除去、Siと化合物半導体のフルカットに対応し、HogoMaxの塗布から加工、洗浄までを1台で行う。グルービングの後のブレード切断と洗浄をどの装置で行うかは、工程別の装置と材料で工程ごとに確かめられる。
DFL7363は薄いSiとMEMSを、水を使わずに割る
Section titled “DFL7363は薄いSiとMEMSを、水を使わずに割る”ステルスダイシングの既存機DFL7362は7、主に極薄Siの個片化に使われ、厚さ50µm以下のSiを高い抗折強度のまま高速に割る。研削の前にレーザを当てるSDBGと、テープ越しに当てるSDTTに対応する。50µm以下まで薄くする研削と、薄いウェーハを支えるキャリアの扱いは仮接着と薄化にまとめている。
DFL7363について、DISCOは2つのチャックテーブル(2C/T)と高出力エンジンにより、生産性が従来機比で約50%上がるとする8。2つのテーブルで加工と測定・検査を並行でき、装置内での加工品質の検査をオプションで載せられる。この並行化で何が変わるかは、DFL7363の並行測定と装置内検査で掘り下げている。
DFL7563は直線以外の形と保護材の除去に向く
Section titled “DFL7563は直線以外の形と保護材の除去に向く”DFL7563はアブレーション方式で、スキャニング光学系と駆動ステージを組み合わせ、複雑な形状や自由曲線を加工する。DISCOは、保護材を選択的に取り除くことで、マスクを使わないプロセスにも応用できると説明する。
既存機にも同じ方向の機能がある。DFL75629は固定光学系とスキャニング光学系を選べ、スキャニング光学系では最大330µm幅のグルービングや、テーパ形状・ラウンド形状の加工を行う。DFL7360LF10はLEAFプロセスに対応し、CADデータを取り込んだ任意形状の加工、細線や曲線のマスクレス加工、ダイヤモンド・ガラス・サファイアのような難加工材の加工を掲げている。
化合物半導体では、DISCOはブレードとレーザの両方の手順を示す
Section titled “化合物半導体では、DISCOはブレードとレーザの両方の手順を示す”GaAsは脆く、結晶方位によってチッピングの出方が大きく変わる。DISCOのGaAsの加工例によると11、チッピングを抑えるため、GaAsはSiより遅い送り速度でブレード加工することが多い。DISCOのレーザフルカットの解説は12、レーザならブレードの10倍の送り速度で加工できた例を示し、カーフ幅が狭いぶんストリートを細くしてウェーハ1枚あたりのチップ数を増やせるとする。GaAsを加工するときは、気化したヒ素を除く設備が別に必要になる。
DISCOの既存機では、DFL716013がGaAsのフルカットで数多くの採用実績を持ち、7161と7562もSiと化合物半導体のフルカットに対応する。DFL7162の発表は、さまざまな素材に対応したフルカット用の光学系を搭載できるとしている。DISCOはGaAsをブレードで高品質に加工する手順も示しており、化合物半導体ではブレードとレーザの両方が選択肢として残る。
販売開始は7563、7363、7162の順に予定されている
Section titled “販売開始は7563、7363、7162の順に予定されている”発表時の予定では、7563が2026年1月ごろ、7363が2026年度下期、7162が2027年4月ごろに販売を始める。テストカットは7162と7563で受け付け中で、7363は担当営業への問い合わせとなっている。DISCOの事業年度は4月に始まり(2025年度は2025年4月〜2026年3月14)、これに当てはめると7363の2026年度下期は2026年10月〜2027年3月になる。販売開始までの間に同じ用途を担う既存機は、DISCOの新レーザソーの販売開始時期で機種ごとに対応づけている。
DISCOの資料では、避ける損傷ごとに機種が分かれる
Section titled “DISCOの資料では、避ける損傷ごとに機種が分かれる”DISCOの資料を、避けたい損傷の種類でこの記事なりに並べ直すと次のようになる。Low-k膜の剥離を避けるなら、アブレーションのグルービングで表層を除いてからブレードで切る(7161、7162)。水、表面の傷、加工くずを避けるなら、内部から割るステルスダイシングを使う(7362、7363)。曲線や保護材の選択除去が要るなら、スキャニング光学系を持つ機種を使う(7562、7360LF、7563)。ブレードを含めた各社の後工程装置は、ベンダー別の装置カタログで比べられる。
14件を表示
- 1
- 2DISCO:Low-kグルービングの手順disco.co.jp ab
- 3DISCO:レーザソー累計出荷4000台を突破(2026年3月)disco.co.jp ↩
- 4DISCO:アブレーションとステルスダイシングの解説technology.disco.co.jp ↩
- 5DISCO:水溶性保護膜HogoMaxの製品情報disco.co.jp ↩
- 6DISCO:DFL7161の製品情報disco.co.jp ↩
- 7DISCO:DFL7362の製品情報disco.co.jp ↩
- 8
- 9DISCO:DFL7562の製品情報disco.co.jp ↩
- 10DISCO:DFL7360LFの製品情報disco.co.jp ↩
- 11DISCO:GaAsのブレード加工例disco.co.jp ↩
- 12DISCO:レーザフルカットダイシングの解説disco.co.jp ↩
- 13DISCO:DFL7160の製品情報disco.co.jp ↩
- 14DISCO:2025年度連結決算の英訳(2026年4月)disco.co.jp ↩