裏面電源の表裏ずれを素子の上で測る候補は電子ビームが先行律速は測定点数、赤外線は目印を、CD-SAXSは周期構造の平均を読む
裏面電源(BSPD)の表裏の重ね合わせを素子の上で測る候補を比べると、装置化が最も進んでいるのは高い加速電圧の電子ビームだ。電子を数百nmの深さまで入れ、裏から開けたビアと表側の素子を1枚の像に写す。Applied Materialsは2025年10月にPROVision 10を発表し、製品ページで裏面電源を対象の1つに挙げた1。律速は測定点数で、同社は補正に要る測定がウェーハ1枚あたり10〜100倍に増える2とみる一方、新しい電子銃で上がる撮像速度は最大10倍だ3。速さで勝る光学式の素子内計測が対抗路線になる。赤外線は大きな目印を読む役に残り、CD-SAXSはロジックでは光源と処理速度が足りない。
表裏の重ね合わせとは、裏から開けたビアと、表側で作った着地先との位置のずれを指す。量産はすでに始まっている。Semiconductor Engineeringの2026年2月の記事によれば、Intelは18AをPowerViaとともに量産へ移した4。この工程の誤差予算は約10 nmで、精度を出すには赤外線で透けて見える目印と、場合によっては着地パッドが要る。ゆがみが大きいので計測と露光はダイごとに補正し、ファウンドリーはトランジスタの位置を特定する金属の目印を作り込んでいる。同じ記事は、このダイごとの補正が量産では時間のかかる工程になると書く。
光学ターゲットの値が素子のずれと合わなくなるのは、目印と素子が別々にゆがむから
Section titled “光学ターゲットの値が素子のずれと合わなくなるのは、目印と素子が別々にゆがむから”従来の重ね合わせ計測は、スクライブ線に置いた専用の目印を、画像で読む方式(IBO)か回折光で読む方式(DBO)で測る。現像後に目印で測った値と、エッチング後に素子の上で測った値の差は「計測と素子のオフセット」と呼ばれる。表側の工程を扱った2021年のSPIEの論文は、重ね合わせの余裕が縮むにつれ、従来の静的な補正では最も厳しい数層でこの差を抑えきれなくなった5と報告した。同じ論文は、データとモデルで差の成分を切り分けて縮める方法を示した。そのため、この差は光学側でも詰められている。
裏面電源では、この差に貼り合わせのゆがみが加わる。ゆがみの大半は露光機で補正できるが、2024年の論文によると、ウェーハの中心と端には短い距離で変わる局所的な変形が残り、露光機では補正しにくい6。Applied Materialsは、裏面の変形が配線のパターンに左右され、予測と補正が難しい非線形の誤差になるとし2、素子の外に置いた大きな代理ターゲットは素子のずれを代表しにくくなると指摘する。誤差の出どころと補正先は表裏の誤差予算の記事、着地先ごとの要求は要求の記事にまとめた。
ゆがみが場所ごとに違うなら、測る側には3つが同時に求められる。埋もれた素子まで届く深さ、ビアと素子を見分ける分解能、ダイごとの補正をまかなう測定点数だ。
赤外線はSiを通して目印を読み、分解能は約0.5 µmだ
Section titled “赤外線はSiを通して目印を読み、分解能は約0.5 µmだ”Siは赤外線を通す。IRDSの2024年版の計測ロードマップによれば、赤外線は厚さ775 µmのウェーハを通り抜け、貼り合わせたウェーハ対の重ね合わせ計測にはハロゲン灯の広帯域光か波長1310 nmのレーザーが使われる。その装置の繰り返し精度は1σで0.1 µm未満、分解能はレイリー基準で約0.5 µmだ7。
裏面電源の露光機も赤外線を使う。Siが赤外線を半ば通すので、露光機の赤外光で金属の目印を照らして位置を合わせられる4。計測機ではKLAのirArcher 007が、短波長赤外の照明で研削前の貼り合わせウェーハの重ね合わせを基板越しに測り、反りの大きいウェーハも扱える8。2026年のSPIEの論文も、ウェーハ同士の貼り合わせに向けて厚く反った基板越しに測る赤外線計測と、補正を前後の工程へ返す制御を開発している9と述べる。
約0.5 µmの分解能は、貼り合わせ後の大きな目印を読む用途に向く。標準セルの寸法で作るビアと素子は、この分解能では分けて写せない。赤外線の役割は目印の位置を露光機や貼り合わせの合わせ込みへ返すことで、目印と素子のオフセットは別の手段で確かめることになる。
高い加速の電子ビームは、裏面ビアと表側の素子を同じ像で読む
Section titled “高い加速の電子ビームは、裏面ビアと表側の素子を同じ像で読む”電子ビームで埋もれた構造を写す鍵は、反射電子(BSE)だ。ASMLの2023年の発表資料によれば、試料の表面から出る二次電子は数nmの深さの情報しか運ばないが、弾性散乱で跳ね返るBSEはエネルギーが高く、数µmの深さまでの情報を運ぶ代わりに、出てくる量が少ない10。加速を上げて奥まで電子を入れ、少ないBSEを効率よく集めれば、上の層を壊さずに下の層を写せる。
Applied Materialsは2025年7月、裏面電源の量産には最大60 keVで電子を積層の奥へ入れ、裏面ビアの位置を表側の素子に対して断面を切らずに測る装置が要るとし2、従来の熱電界放出(TFE)の電子銃では足りないとした。これは要求の説明だ。製品のPROVision 10について同社は、計測装置で初めて冷陰極電界放出(CFE)を使い、TFEに比べて分解能を最大50%、撮像速度を最大10倍に上げ、素子の上で直接重ね合わせを測る3と発表し、複数の先端ロジック・メモリーメーカーが使っているとした。製品ページはBSEの95%を集める検出器と、数百nmの深さまで測る高エネルギーのモード1を挙げる。どれも同社の公称値だ。装置の詳細はPROVision 10の記事で扱っている。
高い加速で素子の中の重ね合わせを測る装置は、表側の工程向けにはすでに製品になっている。ASML(旧HMI)のeP5 XLEは最大30 keVの加速で埋もれた構造から信号を取り、素子の中の重ね合わせを測る10装置で、例はDRAMのビット線と活性領域のエッチング後の重ね合わせだ。日立ハイテクの高加速CD-SEM、CV7300は60 kVの加速で、先端DRAMとロジックの重ね合わせを測る11。両社の資料は裏面電源を挙げていない。
電子ビームはビアを開けた後に測るので、結果は次のロットの補正へ返す形になる。電子を当てたときの帯電も像をゆがめるため、Applied Materialsは輪郭を取り出すアルゴリズムで補うとしている。
律速は測定点数で、電子銃の高速化は要求の下限に届く段階だ
Section titled “律速は測定点数で、電子銃の高速化は要求の下限に届く段階だ”Applied Materialsによれば、裏面のゆがみの補正は単純なずらしを超えるので、測定はウェーハ1枚あたり10〜100倍に増え、しかも計測の工程を長くできない2。PROVision 10の撮像速度は従来比で最大10倍なので、同社の公称値どおりでも、増える点数の下限をまかなう水準だ。製品ページは1時間に最大1億点1の測定をうたう。
電子ビームの遅さは、ASML自身も認めている。2023年の資料で同社は、電子ビーム検査は処理速度のため、3D NANDを除いて量産での用途が限られる10と書き、計測では現像後の目印を光学式で速く測り、エッチング後の素子の中を電子ビームで測って、両方を露光の補正に返す構図を示した。これは表側の工程についての提案だ。
光学式も素子に近づいている。2026年のSPIEの論文によれば、画像で読む重ね合わせ計測はピッチの小さい目印を扱えるようになり、素子のずれをよりよく代表できる9。光学式は速さで勝り、小さな目印で代表性の差を詰める。電子ビームは素子を直接読み、点数の差を詰める。裏面電源の計測は、この2つの路線の競争になる。
電圧コントラストは、ずれをつながり方の変化で読む
Section titled “電圧コントラストは、ずれをつながり方の変化で読む”電子ビームには、形を写す代わりに電気のつながりを読む使い方もある。ASMLのeP5は、欠陥検査で形の欠陥と電圧コントラストの両方のモードを持ち、電気的な欠陥を見つける12。接地につながった導体とつながっていない導体は、電子を当てたときの明るさが違う。
DRAMでは、この差を重ね合わせの値に変える研究がある。意図的にずらした試験パターンを並べ、どのずらし量でつながりが切れるかから絶対値を読む方法で、ASMLの資料によれば、露光区画ごとの成分はSEMで測った素子の中の重ね合わせと1 nm未満の差で一致し、ウェーハ全体の成分は一致しなかった10。裏面のビアでも、つながったかどうかは歩留まりそのものだ。値を得るには、ずらし量を変えた試験パターンを作り込む必要がある。
CD-SAXSはウェーハを丸ごと通るが、ロジックでは光源と処理速度が足りない
Section titled “CD-SAXSはウェーハを丸ごと通るが、ロジックでは光源と処理速度が足りない”透過型の小角X線散乱(CD-SAXS)は、15 keVを超えるX線を厚さ750 µmのウェーハに通し、周期構造からの散乱をウェーハを傾けながら測る。得られるのはスポット内の形の平均だ。IRDSは、透過で測るので積層のすべての周期構造が散乱に加わり、複雑な積層を解くには前の構造の知識が要る7と書く。表裏の両側に配線を持つ裏面電源のウェーハでは、この解析が重くなる。
メモリーでは量産ラインに入っている。KLAは2022年12月、縦に高いメモリー構造全体をX線で透過し、寸法と3次元の形を測るAxion T200013を出した。Onto Innovationで光学計測の応用開発を率いるNick Kellerは2025年12月、CD-SAXSは3D NANDの段と段の間の重ね合わせや傾きの計測で量産の実績があるが、処理速度は光学方式に及ばない14と述べた。光学計測の会社からの見方だ。
ロジックはさらに厳しい。IRDSによれば、3D NANDやDRAMの高い構造は散乱がはるかに強いので、CD-SAXSでも量産に要る処理速度が出る。一方でIRDSは、ロジックの量産ラインでCD-SAXSを使うには100 µm未満のスポットで1点1分未満の測定が要り、小型X線源の大幅な改善が必要とし7、研究室の装置は基準計測に使えるとする。重ね合わせそのものをX線で測る方法は、KLAが2015年に出願し2020年に登録した特許15で提案している。特許は、光を通さない高誘電率材料の層が増えたことを理由に挙げる。
有望なのは電子ビームで、光学式の素子内計測と速さで競う
Section titled “有望なのは電子ビームで、光学式の素子内計測と速さで競う”各社の資料が述べている内容を比較すると、裏面電源を対象に名指しした素子の上の計測装置はPROVision 10だ。ほかの装置は、同じ原理が表側の工程や貼り合わせで使えることを示している。
| 原理 | 会社と装置 | 資料が述べている内容 |
|---|---|---|
| 高加速の電子ビーム | Applied Materials PROVision 10(2025年10月) | CFE電子銃、素子の上で直接重ね合わせを測る、裏面電源を対象に挙げる |
| 高加速の電子ビーム | ASML eP5 XLE | 最大30 keV、素子の中の重ね合わせ(例はDRAM) |
| 高加速の電子ビーム | 日立ハイテク CV7300 | 60 kV、先端DRAMとロジックの重ね合わせ |
| 電圧コントラスト | ASML eP5 | 形の欠陥と電気的な欠陥の検査 |
| 赤外線 | KLA irArcher 007 | 研削前の貼り合わせウェーハの重ね合わせ |
| X線(CD-SAXS) | KLA Axion T2000(2022年12月) | メモリーの高い構造の寸法と形 |
電子ビームが有望なのは、深さと分解能の2つを満たしてビアと素子を同じ像で読めることを、ベンダーが裏面電源向けとして示しているからだ。高い加速で素子の中の重ね合わせを測る装置は、ASMLと日立ハイテクが表側の工程向けに出している。弱みは測定点数で、Applied Materialsの公称値でも要求の下限に届いた段階にある。光学式は速さを保ったまま目印を素子に近づける路線で、ASMLは光学式と電子ビームを組み合わせる構図を示している。赤外線は、Intelの量産のように目印でダイごとに合わせる工程に残る。CD-SAXSは、ロジックでは光源が明るくなるまで基準計測の位置にある。
量産で見るべき点は、電子ビームが10〜100倍の測定点数を工程の時間を延ばさずにこなせるかと、光学式の小さな目印が素子とのオフセットをどこまで縮めるかだ。表裏の位置合わせの全体像は裏面位置合わせの総論にまとめている。
15件を表示
- 1Applied Materials:PROVision 10の製品情報appliedmaterials.com abc
- 2Applied Materials:裏面電源が求める次世代の電子ビーム計測(2025年7月)appliedmaterials.com abcd
- 3Applied Materials:PROVision 10ほか新製品の発表(2025年10月)ir.appliedmaterials.com ab
- 4Semiconductor Engineering:裏面電源が生む装置と放熱の壁、Intel 18Aの量産と赤外線の目印(2026年2月)semiengineering.com ab
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- 6
- 7IEEE IRDS:2024年版計測ロードマップ、赤外線の重ね合わせ計測とCD-SAXS(2024年)irds.ieee.org abc
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- 10
- 11日立ハイテク:高加速CD-SEM CV7300の製品情報hitachi-hightech.com ↩
- 12ASML:電子ビーム計測・検査装置HMI eP5の製品情報asml.com ↩
- 13KLA:X線計測装置Axion T2000の発表(2022年12月)ir.kla.com ↩
- 14Semiconductor Engineering:次世代3D NANDの計測、Onto InnovationによるCD-SAXSの評価(2025年12月)semiengineering.com ↩
- 15KLA:X線による重ね合わせ計測の特許US10545104(2020年1月)patents.google.com ↩