ガルバニック腐食とは
ガルバニック腐食(Galvanic Corrosion)とは、異なる金属が電気的につながり、薬液や水分が両者へ触れることで、一方の金属が優先的に溶ける腐食です。 単独の金属なら問題のない薬液でも、異種金属を一緒に露出させると腐食する場合があります。腐食の大きさを決めるのは、2つの金属が電位列でどれだけ離れているかと、液がどんな性質で、どれだけ長く残るかです。
異種金属、電解液、電子の通り道の3つがそろうと、溶けやすい側の金属が溶ける
Section titled “異種金属、電解液、電子の通り道の3つがそろうと、溶けやすい側の金属が溶ける”ガルバニック腐食は、電解液と電子の通り道がある状態で、異なる2つの金属のあいだに起きる電気化学的な作用です1。異種金属と導電性の液が電池に相当する系を作り、陽極側の金属が溶解します。液のpH、酸素、イオンと両金属の面積比が反応に影響します。2形状と接触面積は、反応が集中する場所も変えます。
3つの条件のどれかが欠けると電池になりません。異種金属が接していても、腐食が進むのは導電性の液と反応条件がそろったときです。
電位列で離れた組合せほど腐食は大きく、程度は液の防錆性で変わる
Section titled “電位列で離れた組合せほど腐食は大きく、程度は液の防錆性で変わる”電位列で2つの金属が離れているほど、ガルバニック腐食の作用や速さは大きくなります1。パワーモジュールの水冷がその例です。表面めっきの銅やニッケルとアルミニウムを比べると、アルミニウムのほうがイオン化しやすい傾向があります3。ルネサスは、冷却水が電解液となり、アルミニウムを陽極、ニッケルや銅を陰極とする電池ができて、アルミニウムが激しく腐食するおそれがあるとしています3。
同じ金属の組でも、液によって結果が変わります。ルネサスは、腐食の程度は50% LLC水溶液のような冷却水の防錆性能で変わるとし3、モジュールを使う前に、実機で使う冷却水でガルバニック腐食試験を行い、腐食が許容できる程度か確かめる3よう求めています。IGBTモジュールの冷却器は、液の選定まで含めて腐食対策になります。
ステンレス鋼は、組む相手によって役割が決まる例です。ステンレス鋼メーカーのOutokumpuは、ステンレス鋼は不動態を保つ限り、多くの環境でほかの金属構造材料より貴で、ほとんどの異種金属の組でカソードになるとしています4。同社は、種類の違うステンレス鋼どうしは、それぞれが単独でその環境で不動態を保てるなら、一般に問題にならない4ともしています。多くの組では陽極側に回るのは相手の金属で、NASAの大気暴露試験場では、ステンレス鋼のねじがアルミニウムにガルバニック腐食を起こし、6か月の暴露で腐食が出ています1。
電位の近い金属を選ぶか、金属どうしを電気的に切り離すと抑えられる
Section titled “電位の近い金属を選ぶか、金属どうしを電気的に切り離すと抑えられる”抑える方法は、電位列で互いに近い金属を使うか、金属どうしを電気的に絶縁することです1。配管では、ふつうはポリマーの絶縁ガスケットをフランジのあいだに挟み、ボルト締結部は絶縁スリーブとワッシャーで切り離します1。金属の組合せを変えずに、電子の通り道だけを断つ方法です。
半導体工程では、異種金属が同じ液に触れる時間とイオンを管理する
Section titled “半導体工程では、異種金属が同じ液に触れる時間とイオンを管理する”バリアメタルと導体が同時に露出する場所では、材料の組合せを確かめます。CMPの後のCMP後洗浄では残渣を除くだけでなく、露出した金属と薬液の適合も評価します。配線金属をCoに替えると、CMPではCuとの腐食電位の差を詰め、ガルバニック腐食を止めることがスラリー設計の課題になります。
組立でも考え方は同じです。露出する金属と電気的な接続を確認し、実際の薬液と時間で腐食を評価します。リンスと乾燥まで含めて管理し、接合後は水分の侵入も確認します。3管理する項目は、金属の組合せ、露出面積、液組成、pH、イオン、時間、温度、乾燥です。
強い洗浄は残渣を減らせますが、金属の組合せによっては腐食が増えることがあります。清浄性と材料適合、リンス・乾燥を合わせて条件を決めます。
腐食は接合部にたまり、位置と断面の元素で原因を分ける
Section titled “腐食は接合部にたまり、位置と断面の元素で原因を分ける”ガルバニック腐食は、異種金属の接合部に腐食がたまっていることで見分けられます1。調べるのは腐食の位置と電気抵抗、断面と元素です。製品では湿気と残留イオンの条件も評価し、洗浄不足による腐食と、膜の不連続とを分けます。
似た不良とも分けます。熱による相互拡散でできるカーケンダルボイドや、電流で原子が動くエレクトロマイグレーションとは、導電性の液と反応条件がそろっていたかで切り分けます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ガルバニック腐食は何をする工程ですか?
工程ではなく、異なる金属が電気的につながり、薬液や水分が両者へ触れることで、一方の金属が優先的に溶ける腐食です。金属の組合せと液の状態で反応が変わり、電位列で離れた組合せほど腐食の作用や速さが大きくなります。
どの段階で行いますか?
露出する金属と電気的な接続を確認し、実際の薬液と時間で腐食を評価します。リンスと乾燥まで含めて管理し、接合後は水分の侵入も確認します。水冷のパワーモジュールでは、実機で使う冷却水で腐食試験を行います。
何を管理しますか?
金属の組合せ、露出面積、液組成、pH、イオン、時間、温度、乾燥を管理します。組合せそのものは、電位の近い金属を選ぶか、絶縁材で金属どうしを電気的に切り離して対処します。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”5件を表示
- 1
- 2Renesas Semiconductor Reliability Handbookrenesas.com ・ 2026年10月12日閲覧 ↩
- 3
- 4
- 5NASA NEPP Update – Body of Knowledge for Copper Wire Bondsntrs.nasa.gov ・ 2026年10月12日閲覧