電源供給網とは
電源供給網とは、チップの隅々まで電源電圧を届ける配線の網です。 すべてのトランジスタが同じ電圧で動くことを目指します。
電源の配線は、信号の配線と同じ層を通ってきました。いま電源を裏へ回そうとするのは、大きな電流を流す太い線が表側を占めるほど、信号へ回せる場所が減るからです。
表から配ると、太い電源線が信号の通り道を狭める
Section titled “表から配ると、太い電源線が信号の通り道を狭める”従来の構成では信号の配線と電源の配線が同じ側の層を共有し、太い電源線のぶん信号の通り道が狭まります。裏面から配る構成では、トランジスタの層を挟んで反対側へ電源の網を配り、表側の層を信号だけに使えます。imecはこの構成のために直径 20 nm・ピッチ 120 nm の裏面ビア1を示し、バリアレスのMoで埋めています。
imecの設計では、裏面へ移して面積が22%減り、電圧降下が122 mV下がった
Section titled “imecの設計では、裏面へ移して面積が22%減り、電圧降下が122 mV下がった”imecの設計では、電源を裏面へ移して合計 22% の面積削減が得られました1。表側の層が信号専用になるためです。電圧降下も 122 mV 下がりました。電源までの経路が短く、太くなるからです。普通はどちらかを差し出す関係にある面積と電圧が同時に改善する点が、この構成が採られる理由です。
裏から届かせるには、極端な薄化と15 nmの合わせ余裕が要る
Section titled “裏から届かせるには、極端な薄化と15 nmの合わせ余裕が要る”裏から配るには、ウェーハを薄くして裏側から表側の構造へ届く穴を通します。極端なウェーハ薄化1が要り、合わせの余裕も狭くなります。55 nm 幅の裏面金属線と 20 nm 幅の円形底部との間の合わせ余裕は 15 nm です。薄化の均一性も影響し、場所によって厚みが異なれば、そこだけ穴の深さが変わって届く位置もずれます。
縦に積むほど、電源は裏から届けたほうが近い
Section titled “縦に積むほど、電源は裏から届けたほうが近い”CFETは、n 型と p 型のトランジスタを縦に重ねます2。縦に積むほど、上から電源を配る距離は伸びます。裏から配る構成なら、電源はトランジスタの真下から届き、積層の高さが増えても電源までの距離は一定のままです。
imecのCFETでは、標準セルを 4T 以下で設計します。セルが狭くなるほど、電源の線が表側を占める割合も上がります。
裏へ移すと、薄化と裏面配線と表裏合わせの工程が丸ごと増える
Section titled “裏へ移すと、薄化と裏面配線と表裏合わせの工程が丸ごと増える”電源の線を太くすれば電圧降下は減りますが、信号へ回せる場所が狭まります。裏面へ移せば両方を同時に改善できる代わりに、ウェーハの薄化、裏面の配線層、表裏を合わせる工程が丸ごと増えます。薄いウェーハは反りやすく、搬送にも支持基板が要ります。得られる 22% は、工程の複雑さで買う面積です。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”電源供給網とは何ですか?
チップの隅々まで電源電圧を届ける配線の網です。すべてのトランジスタが同じ電圧で動くことを目指します。
なぜ面積を食いますか?
大きな電流を流すため、電源の配線は太く作ります。信号の配線と同じ層を使うと、その分だけ信号へ回せる場所が減ります。
裏面から配るとどうなりますか?
imecは、電源を裏面へ移した設計で合計22%の面積削減を得ています。
電圧はどう変わりますか?
imecの同じ設計では、電圧降下が122 mV下がりました。電源までの経路が短く太くなるためです。
裏へ回るには何が要りますか?
ウェーハを薄くして裏からビアを通します。imecは直径20 nm・ピッチ120 nmの裏面ビアを示しています。
ビアは何で埋めますか?
imecはバリアレスのMoで埋めた構造を示しています。細い穴でバリアの取り分を省ける金属です。
3D積層と関係しますか?
します。層を縦に重ねるほど、上からすべてを配ると配線層が厚くなるためです。裏から配る構造と相性がよい組み合わせです。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- IRドロップとは── 電源網の良し悪しが出る指標
- 裏面電源供給とは── 裏から配る構成そのもの
- モノリシック3Dとは── 縦に積む構造との組み合わせ
- ミドルオブライン(MOL)とは── 電源をセルへ渡す層