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自己発熱(Self-Heating)とは

自己発熱(Self-Heating)とは、素子や配線に電流を流したときのジュール発熱によって、素子自身の温度が上がる現象です。 電力供給にも信号伝送にも使う配線を流れる電流が、導体そのものを温めます1。熱は太い経路を用意すれば逃げますが、先端の配線では電流の集まる細いビアと、容量を下げるための絶縁膜が熱の通り道も狭めます。配線を速くする選択が、そのまま温度の上昇として返ってきます。

imecの解析では、配線の熱抵抗の86%が細いビア層に集まる

Section titled “imecの解析では、配線の熱抵抗の86%が細いビア層に集まる”
配線スタックの熱の通り道
配線層ビア層低誘電率膜基板(素子)熱熱抵抗の内訳ビア層86%配線層 14%
imecの解析では、配線スタック全体の熱抵抗のうち86%はビア層、14%は配線層にあります。熱も電流も、断面の狭いビアを通って抜けます。

imecは、BEOL配線スタック全体の熱抵抗のうちビア層が86%を占め、配線層は14%1だとしています。電流を通す断面が狭いビアに、熱抵抗も集まります。世代が進んで配線ピッチが細ると、ビアの断面積も比例して狭まります。電流密度と熱抵抗が上がる場所が、同じビアに重なります。

容量を下げる低誘電率膜と空げきは、熱も通しにくい

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空げきを入れる前と後
低誘電率膜のみ空げきを追加空げき配線低誘電率膜OSG3.0 0.3 W/mK自己発熱低誘電率膜のみ100空げきを追加約130
配線の間を空げきにすると容量は下がりますが、imecの報告では、低誘電率膜だけの配線を100とした自己発熱が約130に増えます。

配線間の寄生容量を下げるため、配線の間は低誘電率(low-k)膜で埋めます。代表的な低誘電率材料OSG3.0の熱伝導率は0.3W/mKで1、金属に比べてはるかに熱を通しにくい値です。imecの14層配線の解析では、配線間の絶縁膜の熱伝導率が1 W/mKを下回ると、配線の温度上昇が急になりました。OSG3.0は、すでにこの範囲にあります。

容量をさらに下げるため配線間に空げき(エアギャップ)を設けると、imecの報告では自己発熱がおよそ30%増えました1。低誘電率膜だけの配線の自己発熱を100とすると、空げきを入れた配線は約130です。同じ解析では、パッケージ上面の冷却を強めても、配線の自己発熱はわずかしか下がりませんでした。

裏面電源供給で薄くなる基板の熱の広がりを、裏面の配線で補える見込み

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裏面電源供給網(BSPDN)は、電源配線を基板の裏側へ移す構造です。imecは、この構造で熱を逃がす役目も持つシリコン基板を極端に薄くすると、素子の自己発熱に熱的な影響が出る懸念があるとしています2。基板は本来、熱を面全体へ広げる役割を担っており、薄くするほどその役割は小さくなります。

一方でimecは、予備的なモデリングから、裏面に敷いた金属配線が横方向への熱の広がりを助け、自己発熱を大きく相殺できる見込みだとしています。

接合部温度は、損失と熱抵抗と基準点の温度で決まる

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接合部温度の見積もり
接合部 Tjケース TcP=0.5 Wθj-c=20℃/W別の経路温度Tj=110℃Tc=100℃10℃
損失0.5 Wが熱抵抗20℃/Wを通ると、接合部はケースより10℃高い110℃になります。並んだ別の経路は、並列の抵抗として合成します。

接合部温度はTj=P×Rth(j−ref)+T(ref)T_\mathrm{j}=P\times R_\mathrm{th}(\mathrm{j}-\mathrm{ref})+T(\mathrm{ref})3で表せます。PPは損失、RthR_\mathrm{th}は接合部から基準点までの熱抵抗、T(ref)T(\mathrm{ref})は基準点の温度です。損失に熱抵抗を掛けた値が、基準点と接合部の温度差になります。同じ形をTj=Tc+(θj−c×消費電力)T_\mathrm{j}=T_\mathrm{c}+(\theta_{\mathrm{j}-\mathrm{c}}\times\text{消費電力})と書くと、θj-c=20℃/W、消費電力0.5W、Tc=100℃の条件でTj=110℃です4。この例に当てはめると、自己発熱で接合部はケースより10℃高くなります。

熱の通り道が複数並ぶときは、電気の並列回路と同じ形で合成できます4。太い経路ほど熱抵抗が低く、全体の熱抵抗を下げます。

温度の上昇は、電圧の読み値そのものも動かします。MOSFETのボディダイオードの順方向電圧VFV_\mathrm{F}は、温度係数がおよそ-2mV/℃の線形特性3を持ちます。

配線を速くする工夫と放熱は引き換えになる

Section titled “配線を速くする工夫と放熱は引き換えになる”

配線を細くし、低誘電率膜や空げきで容量を下げれば、信号は速く伝わります。その代わり、ビアと低誘電率膜は放熱の経路としても細くなり、自己発熱が増えます。容量を取るか熱を取るかは、配線ごとに判断します。

自己発熱とは何ですか?

素子や配線に電流を流したときのジュール発熱で、素子自身の温度が上がる現象です。電力供給や信号伝送で配線を流れる電流が、導体そのものを温めます。

熱抵抗の内訳はどうなっていますか?

imecは、BEOL配線スタック全体の熱抵抗のうちビア層が86%、配線層が14%を占めるとしています。断面の狭いビアを、電流と熱の両方が通ります。

低誘電率膜は自己発熱に関係しますか?

関係します。低誘電率材料OSG3.0の熱伝導率は0.3W/mKで、imecは配線間へ空げきを追加すると自己発熱がおよそ30%増えたと報告しています。

裏面電源供給(BSPDN)でも自己発熱は課題ですか?

課題です。imecは、基板を極端に薄くすると素子の自己発熱に熱的な影響が出る懸念があるとしつつ、裏面の金属配線が横方向への熱の広がりを助け、自己発熱を大きく相殺できる見込みだとしています。

接合部温度はどう求めますか?

Tj=P×Rth(j-ref)+T(ref)で求めます。同じ形をTj=Tc+(θj-c×消費電力)と書くと、θj-c=20℃/W、消費電力0.5W、Tc=100℃ならTj=110℃です。

自己発熱は特性そのものにも表れますか?

表れます。MOSFETのボディダイオード順方向電圧VFの温度係数はおよそ-2mV/℃の線形特性を持ち、温度の上昇が電圧の読み値を動かします。

複数の熱の通り道はどう合わせて考えますか?

並んだ複数の熱伝導経路は、電気の並列回路と同じ形で合成できます。太い経路ほど熱抵抗が低く、全体の熱抵抗を下げます。

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