一時接合と剥離とは
一時接合と剥離とは、製品になるウェーハを支持基板へ一時的に貼り合わせ、薄化と裏面の加工を通した後で剥がし、洗い落とす一組の工程です。 仮接合、デボンディングとも呼ばれます。接着層は、削る間はウェーハを保持し、剥がす時は素直に離れるという正反対の要求を同時に負います。研削と熱に耐える強さが必要ですが、強く付けすぎると、後でデバイスウェーハを傷めずに剥がすことが難しくなります。どの方式で剥がすかが、支持基板の材質と工程の温度上限まで決めます。
薄くしたウェーハは、支持基板なしでは運べない
Section titled “薄くしたウェーハは、支持基板なしでは運べない”薄くしたウェーハは、自分の形を保てなくなります。東京工業大学は2015年に、先端2ギガビットDRAMを作り込んだ直径300mmウェーハを、厚さ775µmから約0.3%にあたる2µmまで薄化しました1。厚さ4µmではDRAMのデバイス層より薄く、可視光も透過し、DRAMの限界厚さは4µm前後とされています。
紙より薄い300mmの円盤を、ロボットが吸いつけて運び、砥石で削り、薬液へ浸すのは無理があります。そこで工程の間だけ、丈夫な板を1枚背負わせます。これがキャリアウェーハ、つまり支持基板です。EVグループの説明では、壊れやすいデバイスウェーハを接着剤などの中間層で支持基板へ仮に貼り合わせると、その後の工程へ処理を進められ2、重要な工程を終えてから支持基板を剥がします。東京エレクトロンのデボンディング装置Synapse Z Plusは、厚さ50µm以下の薄いウェーハでも安定した搬送と加工ができる機能を備えており3、実際の工程はこの程度の厚さのウェーハを扱います。
仮接合はウェーハの薄化と薄いウェーハの搬送に不可欠な工程です4。2.5Dや3D IC、ファンアウト・ウェーハレベル・パッケージングのような先端パッケージのほか、パワーデバイスや化合物半導体、MEMSのように壊れやすい基板を扱う工程でも鍵とされています。
工程は塗る・貼る・削る・剥がす・洗うの5つで、装置は2台
Section titled “工程は塗る・貼る・削る・剥がす・洗うの5つで、装置は2台”東京応化工業は、ウェーハを薄化して積層する三次元実装向けに、ウェーハハンドリングシステムZeroNewtonと、その工程向けの仮止め接着剤を提供しています5。手順は、ウェーハまたはサポートガラスへ仮止め接着剤を塗り、ウェーハへサポートガラスを貼り付け、裏面の薄化とデバイス作成を経てから、サポートガラスを剥がして洗うというものです。
ファンアウトでは順番が異なります。リリースレイヤーを塗ったサポートガラスへ仮止め接着剤を塗り、チップを貼り付け、モールド工程と再配線およびバンプ工程を経てから、サポートガラスを剥がして洗います。支持基板の上でパッケージを組み上げてから、支持基板だけを外す順番です。東京応化工業は、再配線とバンプの工程を終えた基板へ2枚目のサポートガラスを貼り、1枚目の側にも同じ処理を行う選択肢も示しています。
装置では、この5工程が2台にまとめられています。東京エレクトロンのSynapse Vは、ウェーハ2枚を仮接合する工程のうち、材料の塗布、乾燥、接合の3つを1台で行います。同社は、独自のウェーハアライメント機構と接合モジュールにより、TTV(総厚ばらつき)と接合精度で業界最高水準を実現したとしています。Synapse Z Plusは、剥離と、デバイスウェーハおよびキャリアウェーハの洗浄を1台で行い、TSV工程を終えた後の工程を1台で実現しています。EVグループは、2001年に関連装置をリリースして以来、大手のファブ、ファウンドリ、パッケージング企業へ技術と装置を提供しているとしています4。
剥離方式は3つあり、方式が支持基板の材質を決める
Section titled “剥離方式は3つあり、方式が支持基板の材質を決める”EVグループの剥離方式4は3つです。熱スライドオフ剥離は、高温で熱可塑性の接着層を軟らかくし、デバイスウェーハを支持基板から離します。EVグループは、先端パッケージの量産に最初に採用された同社の剥離方式としています。UVレーザー剥離は、紫外線でUVレーザー剥離層を分解し、デバイスウェーハと、紫外線を透過できる支持基板を離します。デバイスウェーハの種類や表面状態への依存が小さい方式とされています。
3つ目のIRレーザー剥離(LayerRelease)は、シリコンの支持基板を使う方式です。EVグループの説明では、シリコンを透過する独自の波長の赤外レーザーをシリコンウェーハの裏面側から照射し6、標準的な成膜であらかじめ形成した無機剥離層がその光を吸収して、所定の層または領域でシリコンが劈開されます。剥がした後は、その層を無機の溶剤で洗い落とせます。
EVグループは、UVとIRのレーザー剥離を、広いプロセスウィンドウと低温での剥離によって超薄型のチップとパッケージの製造を可能にし、熱スライドオフ剥離を補う方式としています。紫外線で剥がすなら支持基板には紫外線を通すガラスが要り、赤外線で剥がすならシリコンの支持基板が使えます。熱で剥がすなら透過は要らず、その代わり工程全体が接着層の軟化温度に付き合います。
シリコンを使えることには意味があります。EVグループは、シリコン基板を前提に設計された製造装置ではガラス基板の処理が難しく、使うには装置の改造が必要で、その費用も高額だとしています6。
有機接着剤は一般に300℃以下で、無機剥離層は1000℃まで上がる
Section titled “有機接着剤は一般に300℃以下で、無機剥離層は1000℃まで上がる”接着剤の数値は、熱に耐える側と洗い落とせる側の両方を満たすように並んでいます。東京応化工業の仮止め接着剤では、塗布の標準膜厚が仮接合と剥離(TBDB)向けの3品種で35〜100µm、ファンアウト向けの2品種で5〜10µmです。工程の熱に耐えられるかを示す5%重量減少温度は5品種とも350℃を超え、ガラス転移温度は90〜140℃、膜ストレスは0.5〜1.2MPaです。後で洗い落とせるかを示す専用シンナーでの洗浄は5品種とも可能で、溶解速度は70〜140nm/sです。12インチ・膜厚50µm・215℃・120秒のウェーハレベルボンディング条件には、TBDB向けの3品種が適合します。
温度は、保持する強さと剥がしやすさのトレードオフが最もはっきり現れる条件です。有機接着剤の使用温度は一般に300℃以下のため、用途は後工程に限られます6。EVグループは、シリコンの支持基板に無機の剥離層を設けると、この温度の上限とガラス基板との相性の問題を解決できるとしています。無機の剥離層は1000℃までの高温工程に適合し、厚さも有機接着剤の数µmに対して数nmです。同社は、これによって有機接着剤が使えなかったエピタキシャル成長、成膜、アニールなどの前工程でも層転写が可能になるとしています。
シリコンの支持基板そのものは以前からありました。ただし従来は、研削、研磨、エッチングで支持基板を完全に除去する必要があり、EVグループは、デバイス動作層の表面にミクロン単位のばらつきが生じ、先端ノードの薄層積層には不向きとされてきたとしています6。IRレーザー剥離は、支持基板を削らずに所定の層で劈開して外す方式です。
支持基板を貼らない選択肢は、ウェーハの縁を残すTAIKO
Section titled “支持基板を貼らない選択肢は、ウェーハの縁を残すTAIKO”ディスコのTAIKOプロセスは、ウェーハ最外周の約3mmの縁を残して内周だけを研削する方法で、ハードサブストレートなどを使わずウェーハだけで強度を保つ一体構造になります。この一体構造には、薄化後に高温工程(メタライゼーションなど)が必要な場合でも7アウトガスが発生しないこと、形状が単純なためパーティクルが入りにくいことという利点があります。
逆に言えば、支持基板を貼ると、有機物の接着層と貼り合わせの界面が1つずつ工程に加わり、その分、後の工程で洗浄と検査が必要です。剥離後にデバイスウェーハとキャリアウェーハの両方を洗う装置構成が使われるのは、このためです。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”一時接合と剥離とは何ですか?
製品になるウェーハを支持基板へ一時的に貼り合わせ、薄化と裏面の加工を通した後で剥がし、洗い落とす一組の工程です。仮接合、仮貼り合わせ、デボンディングとも呼ばれます。
なぜ支持基板へ貼るのですか?
薄いウェーハは、単体では工程を通せないほど薄いためです。仮接合はウェーハの薄化と薄いウェーハの搬送に不可欠で、2.5Dや3D IC、ファンアウト・ウェーハレベル・パッケージングのほか、パワーデバイスや化合物半導体、MEMSのような壊れやすい基板の工程でも鍵とされています。
どんな順番で進みますか?
ウェーハまたはサポートガラスへ仮止め接着剤を塗り、ウェーハへサポートガラスを貼り、裏面の薄化とデバイス作成を経てから、サポートガラスを剥がして洗います。塗る、貼る、削る、剥がす、洗うの5つの工程です。
どうやって剥がしますか?
方式は3つです。高温で熱可塑性の接着層を軟らかくして支持基板から離す熱スライドオフ、紫外線で剥離層を分解するUVレーザー剥離、無機の剥離層を施したシリコン支持基板へ裏面から赤外線を当てるIRレーザー剥離です。
接着剤の何を測りますか?
東京応化工業の仮止め接着剤の基本データには、塗布の標準膜厚、100℃や180℃などでの弾性率、5%重量減少温度、ガラス転移温度、熱膨張係数、膜ストレス、専用シンナーへの溶解速度が並びます。工程の温度と時間に耐えるための数値と、後で洗い落とすための数値が同じ表にあります。
どんな装置を使いますか?
東京エレクトロンのSynapse Vは材料塗布・乾燥・接合の機能を1台へ載せた仮接合装置で、Synapse Z Plusは剥離とデバイスウェーハおよびキャリアウェーハの洗浄を1台へ載せた装置です。EVグループは、2001年に関連装置をリリースして以来、大手のファブ、ファウンドリ、パッケージング企業へ技術と装置を提供しているとしています。
一時接合の欠点は何ですか?
使用温度の上限と、工程に加わる有機物です。有機接着剤の使用温度は一般に300℃以下のため、用途は後工程に限られます。支持基板を使わずウェーハだけで強度を保つディスコのTAIKOプロセスには、薄化後に高温工程が続く場合でもアウトガスが発生しないこと、形状が単純なためパーティクルが入りにくいことという利点があります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- キャリアウェーハとは── 貼り付ける相手の支持基板
- ウェハ薄化(バックグラインド)とは── 一時接合が支える工程
- ハイブリッドボンディングとは── 剥がさずに製品に残る接合
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- 1東京工業大学:三次元積層メモリーの厚さを1/10に極薄化する技術にめどtitech.ac.jp ↩
- 2EVグループ:仮接合装置evgroup.com ↩
- 3東京エレクトロン:3次元実装 Synapse/Ulucusシリーズtel.co.jp ↩
- 4EVグループ:仮接合・剥離evgroup.com abc
- 5東京応化工業:接着剤tok-pr.com ↩
- 6EVグループ:IR LayerRelease技術evgroup.com abcd
- 7ディスコ:TAIKOプロセスdisco.co.jp ↩